新興国に広がるIMF離れ 米国に不信感、強まる中国依存

トルコのエルドアン大統領=15日、アンカラ(AP)
トルコのエルドアン大統領=15日、アンカラ(AP)【拡大】

 新興国経済への不安は危機対処に必要な国際協調の旗振り役の不在を浮き彫りにしている。米国は一方的な貿易・金融制裁を外交手段として駆使し、事態収拾に回る機運はうかがえない。米国主導で運営されてきた国際通貨基金(IMF)に背を向ける動きも出ており、中国の存在感が強まる結果となっている。

 「独立を守る国民ひとりひとりの決意が重要だ」

 トルコのエルドアン大統領は25日の式典で米国への対抗を呼びかけた。リラ急落は10日の米国による対トルコ鉄鋼関税の強化表明がきっかけ。エルドアン氏は現在の通商環境を「経済戦争」と位置づけ、米国への反発を強めている。

 金融筋では「トルコにはIMF支援が不可欠」とされる。IMFは1997年のアジア通貨危機や94年のメキシコ危機を最終的には沈静化に導いた。

 しかしIMF支援を受けるには、財政再建や市場自由化など自由主義的な改革も求められるのが一般的。このため経済政策の独立確保を訴えるエルドアン政権はIMFへの支援要請を拒んでいる。ハイパーインフレに見舞われるベネズエラもIMFに批判的だ。

 こうした中で、中国はリラ急落後、外務省報道官の声明で「トルコとの経済・金融協力の重視」を強調した。7月には中国政府系銀行の対トルコ巨額融資が報じられており、IMFや米国に対する不信が中国の存在感を高める構図となっている。(ワシントン 塩原永久)