ただ、米国の保護主義的な姿勢に対抗するため、日本が重視する多国間の自由貿易に対する関心は高まっていた。実際、米国を除く11カ国のTPP11は来年初めの発効を目指し、参加各国で国内手続きが進む。さらに、タイなど複数の国が新加盟に前向きだ。しかし、TPP11を主導する日本が米国との2国間交渉に乗り出すことで、「発効に向けた機運がしぼむ」(政府関係者)恐れがある。
安倍首相は会見で、「(自由貿易体制の)時計の針を逆戻りさせてはならない」と述べ、米国をTPPという多国間の枠組みに引き戻したいとの思いをにじませた。
だが、経済規模で世界1位の米国と3位の日本がTAGを締結し、農産品などの関税がTPP並みに引き下げられれば、米国にとってはTPP復帰の意義が薄れる。トランプ大統領は25日、ニューヨークの国連総会で演説し、「グローバリズムの思想を拒絶し、愛国主義に基づき行動する」と表明した。多国間の自由貿易体制は試練にさらされている。(大柳聡庸)