もちろんスローフードは草の根の運動である。だがボトムアップの活動も政府と良いタイミングとやり方で手を結ぶと、とてもインパクトのあるものになる。それを実現しているのは、この数十年の環境・社会問題への関心の全体的な高まりによると言える。
ただ、それだけでなく「自動車以外で何とかしていく」とのハングリーな状況が後押ししたからではないか、という気がして仕方がない。多分、こんなことを書くと、昔からスローフードの活動をしてきた、当初インパクトを出すのに苦労した人たちは「そんなの関係ない!」と言うだろう。
それでも外部から眺めてきた人間には、自動車に頼ったピエモンテの低下を救う一助として、スローフードが立派な役割を果たしていると見えてしまう。たとえ、さほど両者に直接の関係がないとしても、自動車という「硬い存在」と相反する「柔らかい存在」を生みやすい土壌ができやすかった、と表現できるのではないか。
栄枯盛衰でいう、枯れて衰えているところこそに新しい芽が育つ。有望なネタ探しのコツかもしれない。(安西洋之)
【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)
上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『デザインの次に来るもの』『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』、共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。