原発新検査の試験運用開始 抜き打ち、立ち入り自由に

原発の新検査制度の試験運用を視察する原子力規制委の山中伸介委員(左端)=1日、福井県おおい町の関電大飯原発
原発の新検査制度の試験運用を視察する原子力規制委の山中伸介委員(左端)=1日、福井県おおい町の関電大飯原発【拡大】

 原発が安全に運転・管理されているかを監視する国の検査の新制度が2020年4月に導入されるのを前に、原子力規制委員会は、実際の原発施設で試験運用を始めた。既に福井県の関西電力大飯原発で行い、1年半の間に全国計17原発で実施する。現行の検査は決められた項目だけを確認する「チェックリスト方式」だったが、新制度では、検査官が施設にいつでも自由に立ち入り、設備やデータを調べ、現場の作業員に聞き取りもできる。

 現行の制度では、検査項目や日程などを電力会社に事前に通告し、立ち入りが制限されるエリアもあったが、16年に国際原子力機関(IAEA)から硬直的と指摘され、変更した。

 大飯原発では1日、現在運転中の大飯3号機でポンプ室から出火したと想定して関電が消火訓練を行い、規制委が視察した。山中伸介委員は検査官とともに、ボンベを背負った関電の消防隊員らが、出火元の部屋の外から扉に排煙用ホースを取り付ける様子などを確認した。

 山中氏は終了後、取材に「検査官が電力事業者と情報共有をすることが必要だ」と述べた。

 新制度では、検査官は実務上の着眼点を詳細にまとめた「検査ガイド」を使う。ガイドは運転管理や防災・非常時対応、放射線管理などの分野ごとに分かれている。試験運用でガイドの内容や検査の所要時間、自由に立ち入りをした際の問題点を洗い出して修正する。

 新たな検査で事故につながりかねない不備が見つかれば、深刻度に応じて4段階に分類。不備が深刻だったり、数が多かったりすれば、5段階の総合評価で最低となり、施設の停止や運転許可の取り消しなど厳しい処分をする。結果は年1回公表する。