【ジャカルタレター】テロリストの巣窟に見る紛争の傷跡 (2/2ページ)

アジア大会の前に、インドネシア警察と軍の特殊部隊が行った反テロ訓練=7月25日、首都ジャカルタ(AP)
アジア大会の前に、インドネシア警察と軍の特殊部隊が行った反テロ訓練=7月25日、首都ジャカルタ(AP)【拡大】

 加えて、元戦闘員が側面的にサポートしていることも、現在に至るまでイスラム過激派が集まっている要因の一つだという。

募る不安不満

 深刻なのは、紛争が始まってから20年になる現在も、ムスリムとキリスト教徒の双方で紛争に加担した人々が心の傷をもったまま何のサポートもなく、多くの不安や不満を抱えたまま生活を送っていることだ。

 また、住民の意向とは違った開発が進んでいることも、人々の不満が募る原因ではないかと思った。

 スラウェシ島の「王様」ともよばれている副大統領ユスフ・カラ氏率いるKallaグループは、中国と組み、設計から発電までを請け負い、大規模な水力発電所をポソに建設し、遠く離れた大都市マカッサルまで電気を届けている。この水力発電所建設により、地元の人々はポソ湖の名物であった巨大うなぎの激減といった環境問題の影響を感じているだけではなく、地元ポソには何の恩恵ももたらさないと不満を持ちながらも、巨大な力を前に無力感でいっぱいであるという。

 テロ対策を考える際、紛争という古傷が完全に癒えていないことや、地域復興が置き去りにされてきたという事実も忘れてはならない。(笹川平和財団 堀場明子)

 「ASEAN経済通信」 https://www.asean-economy.com/