
東アジア地域包括的経済連携の閣僚会合で、記念写真に納まる閣僚ら=13日、シンガポール(ASEAN事務局提供・共同)【拡大】
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉は13日にシンガポールで閉幕した閣僚会合の成果を踏まえ、11月の首脳会合で大詰めを迎える。対米貿易摩擦に手を焼く中国が日本に接近し、目標とする実質妥結に追い風が吹くが、中国と覇権を争う米国は牽制(けんせい)を強めている。双方と良好な関係を築き、二正面外交を乗り切れるのか。微妙なさじ加減が問われる。
絶好の機会
シンガポール会合は13日のみの開催で、年末までに妥結し、自由貿易を推し進めることが必要だとの認識で一致した。会合では関税をどこまで削減できるかなどを話し合った。今回出た論点に関しては10月18~27日、ニュージーランドで事務レベルで協議。そこでも依然残る懸案については再び閣僚会合を開いて議論した後、11月にシンガポールで首脳が会合に臨む予定となっている。首脳会合で実質妥結できれば、2019年以降の最終合意を目指す。
RCEP交渉には東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する。
有望市場のインドが含まれるほか、歴史問題を抱えて関係構築が難しい中国や韓国と一挙に自由貿易協定(FTA)を結べるという点で、日本にとって環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)にも引けを取らない魅力を秘めている。
「米国第一」で突き進むトランプ米政権は、日本や欧州連合(EU)など同盟国に対しても、ときに容赦のない強硬姿勢を見せる。鉄鋼の輸入制限を発動、自動車への追加関税という火種もくすぶる。日本としては米国一辺倒ではなく、中国との関係改善を真剣に模索する必要に迫られている。
一方、中国も米国との「貿易戦争」が長期化する事態を意識し、犬猿の仲といわれるインドをはじめ各方面で仲間づくりを目指す「ほほえみ外交」を展開している。今年は日中平和友好条約の締結から40年という節目に当たる。RCEPを通じ「冷え切った中国との関係を強める絶好の機会」(日本政府関係者)との期待が高まっている。