【中国を読む】景気対策強める中国政府 その影響は (1/2ページ)

中国の実質GDP成長率の推移
中国の実質GDP成長率の推移【拡大】

 世界経済の自律回復の動きも追い風に、昨年の中国の経済成長率は7年ぶりに加速するなど、持ち直しの動きが鮮明になった。半面、足元では米中貿易摩擦の激化など、先行きの景気に対する不透明要因が増加している上、その勢いにも陰りが出つつある。中国政府は景気減速懸念を払拭すべく、さまざまな景気対策を取る姿勢を強めている。こうした動きが中国経済にいかなる影響を与え得るかを考察するとともに、世界経済や国際金融市場に与える影響についても考えてみたい。(第一生命経済研究所・西●徹)

内需の力不足

 中国の今年7~9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比6.5%増に減速して、9年半ぶりとなる低い伸びにとどまった。中国の外需をめぐっては、昨年以降の世界経済の底入れの動きに呼応する形で伸びを加速させてきた。

 しかし、今年7月にトランプ米政権が中国を標的とする形での貿易制裁の発動に踏み切り、その後も段階的に制裁を強化する動きをみせている。9月24日に発動された『第3弾』を受けて、中国の対米輸出の約半分、対米輸入の約7割に制裁関税が課される状態となっており、さまざまな経路を通じて中国経済に悪影響を与えることが懸念される。

 ただし、実際には中国の対米輸出の多くは外資系企業が担っており、9月の輸出はトランプ政権による制裁発動前の駆け込みを背景に大きく上振れする動きがみられた。

 つまり、7~9月期の成長率は全体として減速基調を強めたものの、外需については比較的堅調な推移が続いたと捉えることができる。その意味では、足元の景気減速は家計消費をはじめとする内需が力強さを欠くことが一因といえる。

 習近平政権は発足以降、経済成長の原動力を外需から内需に、内需のなかでも投資から消費にシフトさせることにより中国経済の「新常態(ニューノーマル)」化を推し進める姿勢をみせてきた。ところが米中貿易摩擦の激化に伴い年明け以降の株式相場は調整局面が続き、家計部門にはこれに伴う逆資産効果が消費の重しとなっている。

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