自動車税めぐり経産、総務省に溝 見直しへ攻防本格化

 年末に決める2019年度税制改正で焦点となる自動車関連の税の見直しをめぐり、自動車税の恒久減税を求める自動車団体・経済産業省と、減税による税収減を避けたい総務省・財務省との攻防が本格化してきた。経産省は減税に加え、19年10月予定の消費税率引き上げに伴う需要減対策も要求する。一方、総務省は重要な地方財源となる自動車税の過度な減税に反発。調整は難航しそうだ。

 10月25日早朝の東京・JR田町駅前。日本自動車連盟(JAF)など自動車関連団体は、自動車ユーザーの負担軽減を訴える街頭活動を実施し、朝の通勤客に啓発チラシを配布した。JAFの矢代隆義会長は「来年に消費税増税を控える今こそ複雑な自動車税を改革する最大のチャンスだ」と訴え、19年度改正で攻勢をかける構えを強調した。

 米中貿易摩擦の激化で景気の先行きが見通せない中、自動車業界や経産省の消費税増税による需要減退への危機感は強い。業界は消費税率を10%へ引き上げた場合、年間販売台数が約30万台減少するという試算を出した。自動車保有にかかる税金が国際的に比べ高いことも挙げ、自動車税を軽自動車税に近い水準に下げるよう求めている。

 経産省案では、排気量1000cc以下が1万6000円(現行2万9500円)、1000cc超1500cc以下が2万4000円(同3万4500円)への引き下げを要求。消費税増税後の需要の反動減対策として、増税時に取得税廃止の代わりに燃費に応じて課す新税金「環境性能割」の1年半以上の導入延期や、購入初年度に月割りで支払う自動車税の1年半以上の減免措置なども求める。

 年間の自動車関連の税収約2.6兆円のうち、約2.2兆円が地方への配分だ。経産省の求める自動車税の恒久減税を実施すれば将来的に3500億~4000億円規模の減収になる可能性がある。さらに環境性能割を凍結すれば1000億円以上の財源が失われかねないが、穴埋め財源のめどは立っていない。

 総務・財務両省は「自動車需要の減少はカーシェアの普及など構造変化が要因」などと主張。自動車関連の減税は軽度にとどめ、増税対策は補助金などの予算措置で対応したい考えだ。だが、業界団体は「過去の消費税増税で実際に販売が落ち込んでいる」と反論。意見の溝が埋まる気配はない。(西村利也)