黒田日銀総裁、効率化・統合の必要説く 地銀経営の先行きに懸念

名古屋市で記者会見する日銀の黒田総裁=5日午後
名古屋市で記者会見する日銀の黒田総裁=5日午後【拡大】

 日銀の黒田東彦総裁は5日、名古屋市で記者会見し、地域金融機関の貸し出しによる収益の減少が止まらない限り「いずれ大きな課題が持ち上がってくるのは事実だ」と述べ、地方銀行などの経営の先行きに懸念を示した。人口や企業数の減少による競争の激化で、貸し出しの利ざやを十分に取れない状況にあると指摘し、構造改革の必要性を訴えた。

 日銀の大規模金融緩和による低金利も収益悪化の一因となっているが、黒田氏は地銀などの経営が深刻化するのは5~15年後との認識を示し、緩和政策は「そのタームで長く続くとは思わない」と述べた。

 黒田氏は構造改革の具体例として、金融機関の経営統合や、ITの導入による業務の効率化などを挙げた。日銀として、金融機関の経営の健全性を検証する立ち入り調査「考査」などを通じて、収益力拡大に向け、金融機関と対話していく考えを述べた。

 会見に先立って行った講演では、副作用に配慮しながら金融政策を慎重に運営する姿勢を示した。「デフレ克服のため、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済、物価情勢ではなくなっている」と話し、以前のような大きな政策変更は必要ないと強調した。