タイ、軍の影響力残す体制づくり着々 貢献党の強制解党に現実味 (2/2ページ)

タイ陸軍最大の後ろ盾のプレーム枢密院議長(中)を表敬訪問するプラユット暫定首相(右)(タイ首相府提供)
タイ陸軍最大の後ろ盾のプレーム枢密院議長(中)を表敬訪問するプラユット暫定首相(右)(タイ首相府提供)【拡大】

  • タイの新陸軍司令官に選出されたアピラット大将(中央)(タイ陸軍提供)

司法クーデター

 こうした折、にわかに現実味を帯び始めているのが前与党タイ貢献党に対する強制的な解党処分だ。タクシン内閣が率いたタイ愛国党とそれを実質的に引き継いだ人民の力党は、タクシン・反タクシン両派の激しい対立の中で憲法裁判所が解党とし、多くの党幹部の公民権が剥奪された。今回も同様の事態となる可能性は否定できない。

 憲法裁は1997年憲法から設置された機関で、民主化と法の支配を目的とした違憲審査が本来の任務。ところが、憲法裁判事については上院が最高裁判事や行政最高裁判事らの中から選ぶと規定されてきたことから、たびたび政治的な働きをしてきた。タクシン政権時代から上院は反タクシン派が多数を占めており、こうした動きは「司法クーデター」と揶揄(やゆ)された。新憲法下でも基本的な枠組みは残ったままだ。

 タクシン派と反タクシン派の対立を仲裁する目的からクーデターを決行した軍当局。だが、4年半が過ぎた現在は、タクシン派による政権樹立阻止が唯一の目的となっている。かつて首相を輩出した民主党にも、もはやその勢いはない。ならば、軍政を継続する以外に道はないというのが当面の結論だった。新憲法が定めた民政復帰のための経過期間は選挙後5年。軍政はその先も見据えた影響力の残存を目的とし始めている。タクシン派が水面下でますます抵抗を強めようとするのは必至だ。(在バンコクジャーナリスト・小堀晋一)