【中国IT社会のいま】(3)犯人追跡や渋滞減…公共分野でAI活用

深セン光啓高等理工研究院が開発したAI監視システムの試験運用の映像
深セン光啓高等理工研究院が開発したAI監視システムの試験運用の映像【拡大】

 ■アリババなど開発急ピッチ

 「複数のカメラを使って、リアルタイムで対象者を追跡することができます」

 今年40年を迎える「改革開放」の出発点となった広東省深セン市で、科学技術企業「深セン光啓高等理工研究院」の担当者は多くの人が街頭を歩いている映像を示した。同社が開発した人工知能(AI)を使った監視システムの試験運用の映像だといい、鮮明な映像が次から次へと切り替わっていった。

行方不明者捜索にも

 顔認証で対象人物の動きを追跡するシステムで、感知距離の長さやリアルタイム性能が強みだという。今年から上海市の警察当局で試験運用を開始し、観光名所の外灘(バンド)などで効果を確認したという。これまでに本物の犯罪者を見つけたこともあると“実績”を誇る。

 現在は、公共バスなどさまざまな場面で顔データの収集を行うなどして、システムの精度向上を図っているという。同社でブランドディレクターを務める范嘯卉(はん・しょうき)氏は「行方不明の子供の捜索など公共安全のためにシステムは使われる。データ収集は警察と行っており、情報は当局に保存されているので心配する必要はない」と説明する。

 2010年に設立された同社のコア技術は、人工材料「メタマテリアル」、航空、AI。一見すると異なる分野が並んでいるようにも感じるが、范氏は「メタマテリアルもAIも巨大な計算力が必要だ。当社の強みは計算力で、設立当初からそれぞれの分野に取り組んできた」と自社技術の優位性を訴える。

 同社は最先端の軍用技術の民間利用を進めているとうたう。12年11月に開かれた中国共産党の第18回党大会終了後、習近平国家主席が初めて視察した企業だといい、政府との密接な関係をうかがわせる。

 中国ではAIなど最新ITを治安・交通など公共部門に導入する動きが盛んになっている。

 中国電子商取引最大手アリババグループも、AIなどを使った「城市大脳(シティーブレーン)」を開発した。都市内に設置された信号機や監視カメラの情報といった基礎データを集め、信号の効率的な切り替えなどを行うもので、「交通の知能化」を掲げている。

 アリババの本社がある浙江省の省都・杭州での実運用では、渋滞率が15%減少する効果を上げたと説明する。現在は、江蘇省蘇州や海南省海口など各都市でも採用されているという。

 アリババの広報部門でシニアマネジャーを務める王●(せい)豊氏は「われわれの技術を使ってより良い社会を作っていく」と事業の意義を強調する。城市大脳は交通に照準を合わせたプロジェクトだが、その他にも公共部門での取り組みを進めているという。アリババグループが運営する電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」を使った公共部門の決済や、市民サービスのネット上での解決、社会問題となっている児童の連れ去り事案の取り締まりにビッグデータを活用する取り組みなどが進行中だという。

官民挙げて取り組み

 中国では次世代技術の本命とされるAIの研究・開発が、官民を挙げて急ピッチで進められている。目標に向かって国家主導型で取り組んでおり、その“成果”の活用が公共分野でも広がっている形だ。

 「ビジネスの中心をAIにシフトしつつある」。インターネット検索最大手、百度(バイドゥ)の北京本社で、広報担当の付端凌氏はAIへの対応を説明する。百度でもAIの技術開発を急いでおり、スマートスピーカーへの実装や、自動運転への活用などが行われている。付氏は「ITの中心はインターネット、モバイル、AIと変化してきている」と話す。

 中国でAIの開発が進むにともない、今後も公共分野での活用がさまざまな形で進むことは間違いないとみられる。(深セン 三塚聖平)

●=竹かんむりに青の月が円