中国のIT企業が巨大化への道を突き進んでいる。データの収集量と分析力が勝敗を分ける経済新時代において、中国は米国をしのぐ勢いで成長し、今や覇権を争う存在となった。だが国家を挙げて推進するデジタル戦略は、個人監視の危険と隣り合わせでもある。世界で影響力を増す中国とどう向き合うのか、日本も対応を問われている。
BAT、GAFAに対抗
中国・杭州。スーパーマーケット「盒馬(フーマー)鮮生」の買い物客は商品の値札にスマートフォンをかざして産地を確認し、スマホで支払いを済ませていた。3キロ圏内の住民は、来店せずともインターネットで注文すれば30分以内に商品が届く。客の購入履歴で需要を予測し「売れ残りはほぼない」と担当者は胸を張った。
店を運営するのはネット通販の中国最大手アリババグループだ。米アマゾン・コムの二番煎じだとして「中国版アマゾン」と揶揄(やゆ)された時期もあったが、米誌フォーブスの2018年ランキングで株式時価総額は世界6位。スマホ決済サービスでアリババと中国市場を二分する騰訊控股(テンセント)も8位とベスト10入りし、米国勢も軽視できない存在となった。
先端技術を後押しする中国政府は、企業ごとに取り組むべき人工知能(AI)の開発分野を指定。検索大手の百度(バイドゥ)は自動運転、アリババは都市機能、テンセントは医療と役割分担して戦略的に集中投資する。この3社は米IT大手「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」の向こうを張って「BAT」と並び称されている。
プライバシーは脇へ
世界を席巻するグーグルやアマゾンも中国では話が別だ。厳しい検閲や規制によって市場撤退に追い込まれてきた。14億人近い人口を抱えるその巨大市場で、中国勢は独占的にサービスを展開。膨大なデータを収集、分析し、さらなるビジネスにつなげる好循環を生み出している。トランプ米政権が貿易や知的財産をめぐり中国を攻め立てる背景には、巨大化する中国への恐怖心がある。
米国と覇権を争う中で、足かせともなりかねない個人の権利は脇に追いやられがちだ。先端技術を使った製品を開発する深セン光啓高等理工研究院は、監視カメラの映像からAIが人の顔を識別し、特定人物を追跡できる防犯システムを試験導入した。一般人の行動もいや応なく把握できる技術だが、担当者は「プライバシーには配慮している」とむしろ得意げだった。(杭州、深セン 共同)