【税制大綱】研究開発税制、ベンチャー支援にも重点 日本経済の生産性向上


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 平成31年度の与党税制改正大綱は、安倍晋三政権が最重要課題に掲げる日本経済の生産性向上にも配慮した。民間の研究開発の活性化に向け、技術力のあるベンチャー企業を支援するための優遇策を盛り込んだほか、零細事業者の代替わりと若返りを進めるため、個人事業主の事業承継に対する税優遇を設けた。

 少子化による人口減を背景に日本経済の実力を示す潜在成長率は1%程度で低迷している。安倍政権は経済を底上げするため、ベンチャーや中小企業などの強化が不可欠と考えている。

 ベンチャー企業の支援では、研究開発にかかったお金の一部を法人税額から差し引き、革新的な技術の開発を促す「研究開発税制」を拡充する。

 現行では、企業がこの仕組みで差し引ける控除額は法人税額の25%まで。今回の税制改正では、独自技術などを使って研究開発や事業化を進めるベンチャー企業に関し、上限を法人税額の40%まで引き上げることにした。ベンチャー企業は手元により多くの資金が残り、次の研究開発に回すことができる。

 一方、大企業は控除額の上限を25%のまま据え置く。経団連はすべての企業の上限を30%まで高めるよう求めていたが、今回の税制改正では見送られた。

 研究開発税制ではこのほか、企業がベンチャー企業と連携する場合に税優遇を設けた。現在、企業同士の共同研究では費用の20%が法人税額から控除されるが、今回、共同研究の相手がベンチャー企業の場合、25%まで控除できるようににした。

 零細事業者に関しては、個人商店や小規模の工場などの廃業を回避し、若い後継者に事業を継承していくため、「個人版事業承継税制」を創設した。法人でない個人事業主が事業用の建物や自動車を引き継ぐときの相続税や贈与税の支払いを全額猶予し、後継者が事業を続ける限り、支払わないで済むようにした。

 中小企業については、資本金1億円以下の企業を対象に、年800万円までの所得に適用される法人税率を19%から15%に低くする特例を2年延長した。