【専欄】ブラック・コメディーだけじゃない! 中国映画『我不是薬神』が描く現実 (1/2ページ)

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 2018年、中国映画界で一番の話題は『我不是薬神』だろう。直訳すれば『俺は薬の神様じゃない!』ということか。7月6日の公開初日以来、興行収入は3日間で9億元(約146億7900万円)、11月末には30億元を超す数字を記録している。ブラック・コメディーというイメージだったが、そればかりではない。外からは見えにくい、中国社会の実情を見事に描いていて、ラスト5分はまさに「涙腺崩壊」である。(ノンフィクション作家・青樹明子)

 男性向けのインド製回春薬を売る、小さな店の経営者が主人公。妻に逃げられ、店の家賃も滞る、実にさえない男だったが、ある日「白血病患者だ」という男から「インド製のジェネリック(後発)薬を輸入してくれ」と依頼を受ける。しかしその薬は国の認可を受けてないため、薬効はあっても偽薬となってしまう。偽薬の販売はもちろん犯罪である。最初は金もうけのために始めた“密輸”だったが、真実を知るにつれ次第に…ネタバレになるのでやめておこう。

 作品が描き出すのは、ジェネリック薬の問題だけではない。登場人物の背景からは、そのまま現代中国の闇が透けてみえる。

 年老いた父親の介護に頭を痛める主人公、白血病の幼い娘の薬代のために夜の店で働くポールダンサー、病院代が払えず教会に救いを求める患者たち、彼らのためにひたすら祈る中国語なまりの英語を話す牧師、口減らしのため貧しい農村から出てきた白血病の不良少年。一人一人が、中国社会の現実である。

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