25日の東京外国為替市場の円相場は円買いが進み、一時約4カ月ぶりの円高ドル安水準となる1ドル=110円00銭で取引された。円高進行で輸出関連産業の業績が悪化すれば、景気に冷や水を浴びせ、2%の物価上昇目標を掲げる日本銀行の金融政策にも悪影響を与える懸念がある。
日米株価の大幅な下落を受けて投資家のリスク回避姿勢が強まり、安全な資産とされる円を買ってドルを売る動きが優勢だった。一方、同日の東京債券市場でも安全資産とされる日本国債が買われ、新発10年債の利回りは一時約1年3カ月ぶりに0%となった。
リスク回避局面ではこれまで、米経済の堅調さを背景に円以上にドルが買われて、緩やかな円安ドル高基調となっていたが、米政策運営に対する市場の不透明感が強まり、ドル買いの前提が揺らいだ格好だ。
市場で米連邦準備制度理事会(FRB)が来年にも利上げをやめるとの見方が織り込まれつつあることも円高を後押ししている。長期金利を0%程度に誘導する日本との金利差拡大を意識したこれまでの円売りドル買いの動きが弱まるからだ。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは「来年にかけて一段の円高もあり得る」と予想する。
円高が進行すれば、輸出が牽引(けんいん)する日本経済の失速につながる。景気が悪化するとモノの値段が上がりにくくなるため、1%近辺で足踏みする物価上昇率には逆風となり、大規模金融緩和を手じまいする「出口戦略」の時期も遠ざかることになりそうだ。