勤労統計、04年から不適切調査 厚労省 雇用保険など過少給付か

 賃金や労働時間の動向を把握する「毎月勤労統計調査」について、全数調査が必要な対象事業所の一部を調べない不適切な調査が2004年から行われていたことが9日、分かった。10年以上にわたって誤った手法で行われ、統計結果を算定基準とする雇用保険などが過少に給付されていた恐れもあり、厚生労働省は影響や詳しい経緯を調べている。勤労統計は厚労省が毎月、都道府県を通じて調査し、従業員5人以上の事業所が対象で、従業員500人以上の場合は全てを調べるルール。

 しかし、東京都内では全数調査の対象が約1400事業所あったが、実際には3分の1程度しか調べられておらず、全数調査に近づけるよう係数を掛けるなど統計上の処理をする偽装が行われていた。関係者によると、この誤った形での調査は04年から行われていた。

 賃金が比較的高いとされる大企業の数が実際より少ないと、実態よりも金額が低く集計される可能性がある。

 勤労統計は月例経済報告といった政府の経済分析や、雇用保険や労災保険の算定基準など幅広い分野で用いられる国の「基幹統計」。雇用保険の失業給付の上限額は、勤労統計の平均給与額を踏まえて決まる。

 仕事を通じて病気やけがを負ったと労災認定された場合に支払われる休業補償給付も、平均給与額の変動に応じて見直される仕組みで、正しい手法で調査した結果、平均給与額が高くなれば、こうした保険が過少に給付されていたことになる。

 根本匠厚労相は昨年12月20日に問題の報告を受けたが、翌21日には、調査が不適切だったことを明らかにしないまま10月分の確報値を発表していた。