日本以上の高齢化…シンガポールで家政婦が増える事情 (2/3ページ)

シンガポールのショッピングセンター「ラッキープラザ」内で、同郷の家政婦たちの相談を受けるフィリピン人ボランティア
シンガポールのショッピングセンター「ラッキープラザ」内で、同郷の家政婦たちの相談を受けるフィリピン人ボランティア【拡大】

  • シンガポールのショッピングセンター「ラッキープラザ」前で日曜日、同郷の知人らと待ち合わせするフィリピン人家政婦ら

 ただ、こうした外国人労働者の積極受け入れ政策は、公共交通機関の混雑など国民の不満も引き起こし、政府は2010年、外国人労働者を全労働人口の3分の1に抑制しながら、国民の生産性を引き上げることで経済成長を維持する方針を発表。建設作業に従事する外国人労働者は、過去5年間で12%減少し、28万400人となった。

 一方、外国人家政婦は同5年前比17%増の25万人と増加を続けている。65歳以上の高齢者が人口に占める割合は、2015年の11.7%から、30年には24.5%に上昇すると予想される。家政婦需要は増え続けて、30年には30万人になるとの試算もある。

 民間非営利団体(NPO)「ホーム」は、この1年間で、虐待などを受けた870人以上の外国人家政婦を施設で保護した。

 昨年に保護したインドネシア人女性は、10年間も賃金が未払いで、休みは1日も与えられなかった。家政婦が無許可で商品の食料を食べたと雇い主が警察に訴えたことで、虐待が判明したレアケースだ。他にも、インスタントヌードルばかり与えられ、栄養失調になる家政婦もいる。旅券や携帯電話を家政婦から取り上げる雇い主もいるが、これは、家政婦が逃亡などの問題を起こし、保証金の5000シンガポール(S)ドルを政府に没収されるのを防ぐためだという。

 政府は年に2回の身体検査を家政婦に義務づけているが、血圧などの健康チェックは行わない。妊娠や感染症の有無を調べ、見つかれば本国に強制送還するためだ。単純労働を担う低賃金の外国人労働者を厳格に管理し、定住化や社会負担を防ぐためだが、「人権侵害への対策は抜け穴が多い」(ホーム)と指摘される。

「密室」の中で虐待が起きやすい