専欄

金正恩訪中 中朝両国の報道を比較する

 今年の中国外交は、年明け早々の金正恩(キムジョンウン)(朝鮮労働党委員長)の訪中で始まった。昨年3月の初訪問から数えて4回目だが、この訪中を伝えた中朝両国の国営通信社の報道内容を比較すると、両国が何を国民と国際社会に訴えようとしているかが理解できる。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 北朝鮮の朝鮮中央通信は、過去3回の金正恩訪中に関する報道と同じく、報道の量において中国の新華社を上回っており、中国側の誰が国境の丹東駅で迎えたか、北京駅で迎えたのは誰かなども詳しく報じている。

 むろん、注目すべきは首脳会談に関する報道だが、一方の通信社だけが伝えた内容も少なくない。これも過去3回の報道と変わらない。

 今回、朝鮮中央通信だけが伝えた内容の一つは、金正恩が米朝関係の改善と非核化協議の過程で生じた「難関と懸念」について述べたのに対し、習近平が「朝鮮側が主張する原則的な問題は当然な要求であり、朝鮮側の合理的な関心事項が当然、解決されなければならない」として全面的に「同感」したこと、「中国側はこれまでと同様、今後も朝鮮同志たちの頼もしい後方であり、堅実な同志、友人として双方の根本利益」を守ると述べたことである。

 北朝鮮はこの報道を通じて、中朝が一枚岩で、中国は北朝鮮を全面的に支持していることを強調したかったのだろう。

 これに対し、新華社は、習近平が「半島の非核化実現に向けた朝鮮側の積極的な措置」を評価したこと、「朝鮮側が引き続き半島の非核化を堅持していることを支持する」と述べたこと、金正恩が「引き続き非核化の立場を堅持し、対話と協議によって半島問題を解決する」と述べたことなどを伝えた。

 朝鮮半島における非核化実現のために、中国が「建設的な役割」を果たしていることをアピールしたいとの意向がはっきりとうかがえる。

 また、朝鮮中央通信は、習近平が訪朝招請を受け、訪朝計画も伝えたと報じたが、新華社はこれについて何も伝えていない。第1回訪中の際も朝鮮中央通信は、習近平が訪朝招請を受けたことを伝えたが、新華社はそのときも習近平の訪朝には触れなかった。実際、昨年中の習近平訪朝は実現しなかった。

 これも、北朝鮮が中国との密接な関係を誇示しようとする報道の一環といえよう。(敬称略)

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