【データで読む】ロシア、貧困改善を目指すプーチン大統領 24年までに半減目標

ロシアの首都モスクワで行われた閣僚会議で議長を務めたプーチン大統領=1月16日(AP)
ロシアの首都モスクワで行われた閣僚会議で議長を務めたプーチン大統領=1月16日(AP)【拡大】

 ロシアで貧困が社会問題となっており、プーチン大統領は昨年5月の大統領令で、2024年までに貧困層を半減する目標を掲げた。1人当たりの所得が最低生活限度額を下回る貧困者数の割合は、冷戦終結後の移行経済期の格差拡大により、00年頃に30%近くまで上昇したあと、07年頃にかけて経済回復とともに改善した。しかし、14年後半以降は、原油価格急落やクリミア侵攻に伴う欧米諸国からの経済制裁が打撃となり、景気が低迷するなかで、改善の動きは進んでいない。貧困者数は、国民の13%程度にあたる約2000万人近くで高止まりしている。

 ロシアでは最低賃金が安いため、職を得て働いていても貧困に苦しむ人が少なくない。プーチン大統領は、貧困対策として最低賃金の引き上げを進めており、昨年5月に最低生活限度額である月額1万1163ルーブル(約1万8600円)としたあと、今年も1月に再度最低賃金を引き上げた。実質賃金上昇率も上昇基調にあり、失業率も4%台と過去と比べても低水準にあるなど、足元の雇用と所得の情勢は悪くない。

 一方、政府の財政状態が厳しいことから、今年1月には付加価値税を18%から20%に引き上げたほか、年金支給開始年齢の段階的な引き上げも行われる。原油価格の下落や米国からの経済制裁強化による影響も懸念され、プーチン大統領が目標とする貧困層の半減は容易ではない。(編集協力=日本政策投資銀行)