【生かせ!知財ビジネス】スタートアップ向けコミュニティー形成を

東京・港区の虎ノ門ヒルズベンチャーカフェで開かれた「スタートアップコミュニティと知財人材」のトークセッション
東京・港区の虎ノ門ヒルズベンチャーカフェで開かれた「スタートアップコミュニティと知財人材」のトークセッション【拡大】

 「スタートアップにとって知財はとても重要だが、日本ではあまり認識されていない。スタートアップのための知財支援コミュニティーが必要では」と語るのは、特許庁の今村亘企画調査課長。同庁が2018年度に開始したスタートアップ向け知財支援事業の一環で1月17日、都内で開かれた「スタートアップコミュニティと知財人材」というトークセッションでの一言だ。

 スタートアップが知財を確立していけば、事業の独占や大企業などとの連携、ブランド確立、投融資を受ける際の信用を築く上での有効な武器となる。しかし、日本のベンチャーを取り巻く「ビジネスエコシステム」(事業生態系)において、ベンチャーキャピタルや経営メンター、インキュベーションプログラムなどに知財を知る人材はあまり多くはいないのが現状だという。

 このため特許庁は、現在進めているスタートアップ向けの情報発信や知財戦略構築支援などの事業を推進するとともに、新年度にはスタートアップと知財の双方に精通した企業人や専門家、支援者、そしてスタートアップが集うコミュニティーの形成が必要だと考えている。

 では現在、双方の分野をまたぐ知見や活動を行う人材が集まるコミュニティーはあるのか。例えば知財の世界では日本知的財産協会がある。主に大企業の知財部の実務家が集う場であり、スタートアップ向けではない。

 では専門人材はいるか。特許庁はスタートアップへ派遣する知財メンタリングチームを昨年作ったが、専門人材の探索には苦労するという。専門人材発掘の意味でも基盤となる新たなコミュニティー形成は重要になる。

 課題もある。民間コミュニティーの形成を促進するなら参加者には自己責任の意識が必要だ。出会った人々の情報に引きずられけがをする場合もある。情報は多面的に収集し、精査して取り込む姿勢の啓蒙(けいもう)が必要になる。

 まれに、このようなコミュニティーにはトラブルを生む人々が入り込んでしまうことも起こり得るので注意をしたい。最近も、国際的に有名なビジネスプランコンテストで受賞したスタートアップ経営者が警視庁に詐欺で逮捕された。

 次代のイノベーションを築く核となるスタートアップ。知財支援コミュニティー形成へ向けた動きが注目される。(知財情報&戦略システム 中岡浩)