ゾロアスター教徒、純血性重んじ減少の一途 インドに全世界の半数

インド西部ムンバイにあるパールシーたちが住むコミュニティーの門。いくつもあるコミュニティーの一つ=1月17日(共同)
インド西部ムンバイにあるパールシーたちが住むコミュニティーの門。いくつもあるコミュニティーの一つ=1月17日(共同)【拡大】

  • フレディ・マーキュリー(ゲッティ=共同)

 英ロックバンド「クイーン」の軌跡を描き日本でも大ヒット、米アカデミー賞の作品賞候補となった映画「ボヘミアン・ラプソディ」。主人公のフレディ・マーキュリーはゾロアスター教(拝火教)の家庭に生まれ、少年期をインド西部ムンバイで過ごした。インドには全世界の拝火教徒の約半数が住み、ムンバイには最大のコミュニティーがある。だが、純血性を重んじる教えなどから、信者数は減少の一途だ。

最も大切な「三徳」

 映画の中でフレディの父親は「善き考え、善き言葉、善き行い」と何度も口にする。信者向け専門誌パルシアナのジャハンギール・パテル編集長は「拝火教徒にとって最も大切な『三つの徳』だ。映画を通じてパールシーを知ってもらえればうれしい」と話す。

 パールシーとは1000年以上前、イスラム王朝の侵攻によって現在のイランを追われ、インド西部に移り住んだ拝火教徒を指す。英植民地時代には貿易などで活躍。インド最大財閥タタの創業者一族や、世界的指揮者のズービン・メータ氏らを輩出している。

 しかし、1940年代には11万人以上いたパールシーは、現在では約5万人にまで減少した。パテルさんは「昨年は約700人が亡くなり、生まれたのは約160人。信者の高齢化で減少のスピードも速くなっている」と危機感を示す。

伝統守る「閉鎖性」

 拝火教は父親が信者でなければ子供は入信できず、異教徒と結婚する女性は信仰を捨てなければならない。そのため独身のまま生涯を終える信者も少なくない。死後は遺体を鳥に食べさせる「鳥葬」を、伝統として現在まで続けているのも特徴だ。鳥葬の施設や拝火教の寺院には、信者以外の立ち入りが厳しく禁じられている。

 ムンバイ市内に住む70代の男性信者は「(パールシーは)閉鎖的と言われるが、少数派が伝統を守るためには仕方がないこと」と言い切る。パールシー間の結婚を促すため、若い信者同士の交流会も行われているという。一方、50代の男性信者は「伝統は大切だが、時代とあまりにかけ離れてしまえば未来はないだろう」と複雑な表情を浮かべた。

 日本に留学していたパールシーの男性と結婚し、ムンバイに住むメヘタ由里子さん=熊本市出身=は「食べ物や生活習慣などで宗教上のタブーはなく、教義の押しつけもない。一般的なインド人に比べて、フレンドリーな人たちが多いと感じる」と言う。2人の子供はいずれも拝火教徒だ。由里子さんは「信者が減少しているパールシーの現状は、少子高齢化が進む日本と似ているのではないか」と話した。(ムンバイ 共同)