中国、人口減少に反転「27年から」 政府系シンクタンク予測

河北省石家荘市の産婦人科で誕生した赤ちゃん(中国新聞社)
河北省石家荘市の産婦人科で誕生した赤ちゃん(中国新聞社)【拡大】

 約14億人を抱える中国が人口減少時代を迎えつつある。人口抑制のための「一人っ子政策」廃止から3年となるが、出生数は2年連続で減少。政府系シンクタンクは2027年に人口減に転ずると予測するが、既にピークを過ぎたとの分析も。働き盛りの年代は減り始め、習近平指導部は景気低迷に加え人口減少の難題に直面している。

 中国国家統計局は1月下旬、昨年1年間に生まれた子供は1523万人で、前年より200万人減ったと発表した。中国政府は16年1月に30年以上続いた人口抑制策を廃止し、全ての夫婦に第2子出産を認めたが、出生数が前年比63万人減った17年に続く減少となった。さらに18年は減少幅が拡大し、政策転換による人口増の効果は全く期待できないことが鮮明になった。

 出産世代の女性の減少や晩婚化、子育てコストの上昇に加え、長年にわたる一人っ子政策により「子供は1人」との考え方が定着したことが出生数が伸び悩む原因として指摘されている。統計局の寧吉哲局長は記者会見で「(労働人口の多さが成長に有利に働く)人口ボーナスは続いている」と強調、人口減に伴う経済の失速への懸念払拭に躍起になった。

 「人口減少の時代が間もなく到来する」。政府系シンクタンク、中国社会科学院は1月、1人の女性が産む子供の推定人数「合計特殊出生率」が1.6で推移した場合、27年に人口のピークを迎えるとの予測を公表。「社会経済に悪い結果をもたらすのは必至だ」と危機感をあらわにした。

 一方、人口問題の専門家、易富賢氏は、中国政府の人口統計は水増しされた報告に基づいており、実情に即していないと非難。その上で18年の出生率は1.05前後で、人口は既に減少に転じたとする独自の分析結果を公開した。10年以上前から一人っ子政策の弊害を訴えてきた易氏の主張は注目を集め、衝撃が広がったが、中国当局は「根拠がない」として沈静化を図っている。

 中国で労働年齢人口(15~59歳)は縮小が続いている。国連の予測によると、50年には現在の規模よりも25%減る。経済活動の主力となる40代の人口も減少傾向にある。統計局によると、18年の65歳以上の高齢者は日本の総人口を上回る1億6658万人で全体の11.9%を占め、国連が「高齢社会」の基準値とする14%に近づいている。

 日本を追いかけるように高齢化が進むが、先進国となってから高齢社会を迎えた日本と異なり、中国は発展途上国のままだ。医療や介護の需要に対応する社会保障制度は十分に整備されていない。易氏は「19年の年齢構成は1992年の日本と類似しており、経済の活力は衰え、政治や経済にも地政学的な変化をもたらすだろう」との見通しを示した。(北京 共同)