国は、原子力発電への依存度を下げつつも、引き続き活用する方針を示している。2030(令和12)年度の電源構成で原発比率を20~22%(平成29年度は3%)に引き上げる目標を掲げている中、原発のテロ対策施設「特定重大事故等対処施設」(特重施設)について原子力規制委員会が完成期限の延長を認めないと決めたことは、この目標の実現に向けて新たな課題となりかねない。(森田晶宏)
昨年7月に改定された国のエネルギー基本計画は原発について「長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置づけた。一方、原発の安全性については「規制委の専門的な判断に委ねる」としている。
規制委は今回、電力会社が求めていた特重施設の完成期限の延長に応じず、安全性確保へ厳格な対応を示した。ただ、東京工業大の奈良林直特任教授は「原発の再稼働で、電力会社が電気料金を値下げしたり、地球温暖化につながる二酸化炭素(CO2)の排出が抑えられたりする側面もある。そうした流れが逆方向に行きかねない」との見方を示す。
また、原発比率20~22%の実現には30基程度が動く必要があるとされるが、東京電力福島第1原子力発電所事故後に策定された新規制基準のもとで再稼働した原発は西日本の5原発9基にとどまる。福島第1原発と同じタイプで東日本に多く、まだ再稼働した事例がない沸騰水型軽水炉(BWR)の原発も特重施設の工期は長期化する見込みだ。