米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が1日の記者会見で、早期の利上げとともに利下げの可能性も打ち消したことを、米国の株式市場は悪材料と受け止めた。ただしパウエル氏は、物価低迷が続けば「問題だ」として将来的な金利引き下げの可能性は否定しておらず、投資家は依然として年内利下げの見通しを捨てていない。
1日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、前日比162・77ドル安で取引を終えた。パウエル氏の会見後に株価が下げ足を速め、FRBが利下げに出るとの思惑が、いかに市場に広がっていたのかを物語る形となった。
パウエル氏が当面の利下げの必要性を否定した背景には、懸念材料である物価上昇の鈍さは携帯電話の通信費下落など一過性の要因を受けた可能性があるとの判断がある。ただし市場がFRBの次の動きとして想定するのはやはり利下げだ。米CMEグループによると、投資家が見込む年内利上げの確率はゼロだが、金利据え置きか、利下げの確率はそれぞれ約50%ずつとなっている。
パウエル氏も「物価上昇率が継続的に2%を上回ったり、下回れば問題だ」と述べ、利下げの可能性自体は否定していない。米国の金融政策の方向性は当面、見通しにくい状況が続きそうだ。
また、利下げを促すトランプ氏の「口先介入」が市場の思惑をかき立て、FRBの「市場とのコミュニケーション」を無用に難しくする懸念も強まっている。(ワシントン 塩原永久)