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米中貿易交渉 世界経済の急減速は必至 日本は増税延期論も

 トランプ米大統領が中国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)分に対する追加関税率を25%に引き上げる方針を示し、米中の貿易戦争がエスカレートする懸念が強まり始めた。金融市場などにも悪影響が波及すれば、世界経済の急減速は必至。日本では、10月に予定される消費税率10%への引き上げを延期すべきだとの声が強まりかねない。

 経済協力開発機構(OECD)が昨年11月にまとめた試算によると、米国が中国からの輸入品2000億ドル分への関税を25%に引き上げ報復関税が打ち出された場合、これまでの関税分も含め、国内総生産(GDP)は米国が0.4%、中国が0.6%、世界全体が0.2%押し下げられる。輸入品全体に25%を課すと、米国は0.8%、中国は1%、世界全体は0.4%、押し下げられるという。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、米中貿易摩擦の拡大は「消耗戦以外の何物でもない」と指摘する。米国の場合、衣料品、日用雑貨など国内生産への切り替えが難しいモノへ高関税がかかれば、輸入して販売している米企業の利益の減少や米国内での小売価格の値上がり、消費の冷え込みにつながりうる。

 中国も対米輸出が減り、中国企業の収益が悪化。中国で生産して米国へ輸出している日本企業や他の国の企業も打撃を受ける。米中の景気が落ち込めば、両国へ輸出しているアジア各国などにも波及する。小林氏は「株価急落など金融市場の混乱に至れば、世界同時不況の懸念も高まってくる」と警告する。

 既に日本の輸出や生産には悪影響が出ており、内閣府が今月13日発表する3月の景気動向指数の基調判断は、景気後退の可能性を示す「悪化」に下方修正される公算が大きい。20日発表の今年1~3月期のGDP速報値も、2四半期ぶりのマイナスに転じる可能性がある。

 消費税増税に関しては、安倍晋三首相が「リーマン・ショック級の出来事がない限り予定通り行う」としているが、世界経済減速の色が濃くなれば、増税の延期圧力が高まりそうだ。(山口暢彦)

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