ビジネスアイコラム

“リーマン”より深刻、対米摩擦で疲弊 「チャイナ・ショック」は底なし (2/3ページ)

田村秀男

 理由は簡単だ。リーマン・ショックの舞台は金融市場であり、当局が市場原理を逆手にとって証券を買い上げ、かつ巨額の資金を投入すればソリューションに導くことができた。ところが、チャイナ・ショックは米側が要求を取り下げるか、中国側が全面降伏する以外、決着できない。いずれも不可能だ。

 米議会では野党の民主党が共和党よりも中国に厳しい。来年の大統領選を控え、トランプ氏は強硬路線で一貫するしかない。習氏もまた絶対に譲れない。米側の要求は中国に法律を作らせて、貿易不均衡解消や知的財産権侵害絶滅に導く。言い換えると中国共産党が指揮する商慣行、政策や制度を自らの立法で無力化させる意味がある。

 ファーウェイなど中国企業に関しては中国の国家情報法よりも、米国の法律に従わせようと迫る。ワシントンの要求をのむことは、自己否定同然なのだから、習氏ならずとも、北京がおいそれと取引に応じられるはずはない。

 それでも一時的な休戦の可能性がないわけではないが、少なくてもトランプ政権は年間3000億ドル以上に上る中国の対米黒字を1000億ドル以上減らさせるめどが立つことが最低の妥協ラインである。そうなると500億ドルにも満たない経常収支黒字は赤字に転落しかねないが、それは中国の通貨・金融システムを根底から揺さぶる。

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