検証エコノミー

相次ぐ地方金融機関の不正 「森チルドレン」凋落 (1/2ページ)

 地域金融機関の不祥事が相次いでいる。特に不正融資が問題となったスルガ銀行(静岡)や、「第2のスルガ銀」とも揶揄(やゆ)される信用金庫大手の西武信用金庫(東京)は、金融庁の森信親前長官が「優等生」としてお墨付きを与えた“チルドレン”。事業の核に据えた投資用不動産向け融資で過剰な成果主義がずさんな融資審査を野放しにした。ただ、厳しい経営環境下で自助努力を怠れば生き残りが難しいのも事実で、進退窮まった地方銀行を糾合する構想も浮上している。

 「成長経済だった日本は円熟・衰退へと向かう変革期。小が大に勝てる絶好のチャンスだ。攻めの経営に転換しなければならない」

 平成28年11月8日、西武信金の落合寛司理事長(当時)は東京・大手町で開かれたフォーラムでこう強調した。熱弁を振るったのは金融庁長官(同)の森氏が基調講演を行った直後だ。

 絶頂期は2年半後に暗転した。今年5月24日、金融庁の業務改善命令を受け常務理事から理事長に昇格した高橋一朗氏は、「落合は本日付で今回の一連の内部統制の不備等に責任を感じ、自ら退任した」と絞り出すように説明した。過去の入居実績や投資家の預金残高を改竄(かいざん)した事例に加え、準暴力団とみられる人物の親族への融資も判明した。

 当の落合氏は会見を欠席し、反社会的勢力との関係などについて自ら説明することはなかった。同様にシェアハウス投資向け融資をめぐり審査書類の改竄に手を染めたスルガ銀も、30年以上君臨した岡野光喜前会長が昨年9月の辞任以降、公の場に姿を現していない。

 業界屈指の高収益を誇る西武信金やスルガ銀が「優等生」ともてはやされたのは、地域金融機関に創意工夫で新たなビジネスモデルを作り出すよう促した森氏がそのモデルケースと位置づけたからでもある。業界の寵児(ちょうじ)になった2人の経営者は、くしくも昨年7月の森氏退任後に相次いで凋落(ちょうらく)した。

 ◆融資偏重で歪み

 両金融機関に共通するのは、トップの旗振りのもとで融資額の伸長にひた走った前のめりな経営姿勢だ。

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