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選挙で相次ぐ無効票・疑問票はなぜ起きる? ガラパゴス化した方法が原因か (2/2ページ)

 なぜ選挙のたびにこうした問題が起こるのか。選挙制度に詳しい立命館大法学部の小松浩教授(憲法学)は、「日本でガラパゴス化した『自書式』という投票方式が大きな原因だ」と指摘する。

 世界各国ではあらかじめ候補者名や政党名が書かれた投票用紙に○や×の印をつけて意思を示す「記号式」がスタンダードだ。

 「正直、自書式にメリットはない」と小松氏。判読が困難な票が多くなり、集計ミスや開票事務のコストが増える▽高齢者や障害者など字が書けない・書きにくい人に不利益が生じる▽政策より氏名連呼に偏る候補者がいる-ことなどをデメリットとして挙げた。

 ただ、政治家側にはこだわりもあるようだ。松井一郎・大阪市長は、大阪市議選の数え直しで票数に変動が生じたことについて、「あってはならないこと。原因の究明が必要だ」としたが、「政治家としては、自分の名前を書いてもらうことにやりがいを感じる」とも話した。

投票方法、再考も

 自書式から転換する動きもある。総務省などによると、240あまりの県や市町村では条例で記号式投票を導入。知事選で記号式投票を実施している島根県の選管によると、白票以外の無効票が少なくなり、開票作業の効率化が図られているという。

 ただ、記号式では投票用紙に記載できるのは6人ほどが限界で、首長選に限定する自治体がほとんどだ。

 平成14年から選挙で使えるようになった電子投票に向けた動きも鈍い。海外ではベルギーやエストニアなど10カ国以上で、何らかの電子投票を導入済みだが、国内では14年以降に実施したのは全国でわずか10市町村にとどまっている。

 機器のレンタル費用などの負担が大きいことに加え、各地で投票トラブルがあったことで機運はしぼみ、唯一続けてきた青森県六戸町も次回以降は自書式へ戻すことを決定している。

 票数の変動は、選挙行政の信頼を揺るがす事態につながる。小松氏は「社会が技術に合わせて発展する中、投票制度は古いまま。有権者も疑問を持ち、声をあげるべきだ」とし、投票方法の再考の必要性を指摘している。

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