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今年は愛国? 中国の大学入試「高考」作文テーマ

 一年を通じて庶民の大きな関心を集めるのが大学入試「高考」だが、終了後もしばらくは話題に事欠かない。成績優秀者の発表、高校別のランキングなどの他、全国的に注目を集めるのが、国語の試験で出題される「作文」である。(ノンフィクション作家・青樹明子)

 800字ほどの小論文で、要求されるテーマはその年の世相、国家の指針などが表れていて、受験生のみならず中国社会全体での関心度は非常に高い。試験終了直後、即刻メディアなどで公表され、有名高校の先生たちの模範解答の他、著名な作家たちも、同じテーマで書いた文章を発表するほどである。

 点数も他の問題に比べ、大きな割合を占めていて、受験生も早くから「傾向と対策」に余念がない。

 過去の出題を見てみると、1970~80年代は、政治姿勢を問うテーマが多かった。「この一年、私の戦い」(77年)「速度は政治に(こそ)必要な課題」(78年)「大躍進における感動的な一幕」(85年)など、そっくりそのまま、公務員採用試験になりそうな出題である。

 89年の天安門事件以降は、政治姿勢を直接問うよりも、道徳観に重点を置くものが主流となる。「苦悩する友へ送る手紙」(89年)「求めるのは強靭な精神」(98年)など、精神性、道徳観を問うものが多く見られた。

 では今年2019年はどうだったのだろう。

 今年は、建国70周年、五四運動100周年で、国家にとり、節目の年でもある。しかも米中貿易摩擦問題で、中華思想が強化されているためか「愛国心」や「奮闘精神」などというキーワードが目につく。特に「中華文明の粘り強さについて」(北京で出題)「中国らしさとは」(同上海)などには、「中国の外交姿勢を表している感じがした」(受験生)との声も出る。

 南開大学など重点大学を擁する天津では、方志敏(革命家・政治家)、陶行知(思想家・平民教育運動に携わった)、黄大年(航空地球物理学者、愛国家として知られる)を通じて、国家や民族に対する責任とは何か、人類の歴史や発展に献身した偉人たちの人生観や価値観をどう評価するか、を問う問題が出題されている。

 ここで思い起こすのは「科挙」である。科挙とは、隋から清の時代まで、約1300年間にわたって行われた官僚登用試験である。

 中国の大学は、ほとんどが国公立、つまり国に属していて、大学は国家の人材養成が最大の目的だ。大学入試とは、将来、国を担える人材かどうか、国の方針にのっとって行動できる人材かどうかを判断する試験と言っても過言ではない。

 中国の高考は現代の科挙であるということを再認識させられた、今年の作文テーマだった。

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