国内

収益か産業育成か 官民ファンドの抱えるジレンマ露呈

 官民ファンドが今年度以降もそれぞれ数百億~1000億円超に上る投資計画を立てている。A-FIVEに関しては、今年度の投資額は前年度比9倍の110億円で、今後8年間で700億円を投じる計画だ。最終的には82億円の黒字を確保するという。

 平成29年度末で98億円の累積赤字を抱える経済産業省管轄の「クールジャパン機構」も、日本文化を海外に売り込むことを目的に今後1810億円を投資。このほか、「海外交通・都市開発事業支援機構」、「海外通信・放送・郵便事業支援機構」でもそれぞれ巨額投資を予定している。いずれのファンドも収益確保に向けて投資額を増やし、将来的な黒字化を目指す計算だが、実績が乏しいファンドは黒字化が計画倒れに終わる可能性もある。財務省は今年度から計画に沿った運営をしているかを毎年チェックしていくという。

 ただ、無駄な投資の見極めは必要なものの、公的な資金を使い、民間では投資しにくい事業再生などを手掛けるのが官民ファンド。利益重視を前提に投資先を選べば、おのずと民間ファンドと投資先が重複することは避けられず、本来の目的を失うリスクもある。ある農林水産省の幹部は、「リスクがある中でうまくやる知恵が必要」としつつも、「農林水産業の発展に寄与するのが目的。100%担保があってする融資ではない」と理解を求めている。

 とはいえ、官民ファンドの旧産業革新機構では、半導体のルネサスエレクトロニクス向けなど救済色の強い案件への投資が目立ち、批判を浴びたケースもある。

 収益確保か、産業育成か。今回の問題で官民ファンドが抱えるジレンマが改めて露呈したといえる。(飯田耕司)

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