海外情勢

ラオスのダム決壊1年 農業再開進まず 中国資本進出に農薬汚染の懸念も (2/2ページ)

 強者が弱者縛る構図

 一方、被害の大きかった6つの村では、いまなお土砂が住宅地や田畑を覆い、住民は仮設の住居などで先の見えない不安な生活を送っている。こうした中、中国資本がラオス政府から許可を得て、比較的被害の少なかった被災地周辺でバナナ農園を新設する動きが広がっている。被災した地元住民の雇用を名目としている。

 このうち、サナームサイ郡ピンドン村では約2000ヘクタールの使用が新たに認められ、農園で働く労働者の募集が始まった。また、地理的にベトナム寄りのサーマッキーサイ郡にあるベトナム資本のバナナ園では、中国資本が参加して約3000ヘクタールだった農地を約1万ヘクタールにまで拡張する整地が続けられている。同地にはこれまでゴム園が広がっていたが、ゴムの国際価格の下落から転作が決まり、伐採されることになった。

 こうしたバナナ農園では100~200人単位の被災した住民が新規で雇用されているが、多くの人々は応じようとはしない。彼らが求めるのは農業の再開であり、口々に懸念を示すのは中国式バナナ農法による汚染だ。稲作農家のポームさんも、そうした中国資本の進出を疑問視する一人。「中国の農法は農薬を多用する。その結果、土地は痩せ、われわれが住むこの地域の水は汚染が深刻化してしまう。われわれは農業を再開したいだけなのに」と語る。

 ラオス南部のアッタプー県ではかつて砂金が取れ、ちょっとしたゴールドラッシュに沸いた時期があった。2000年代半ばのことだ。この時も、中国資本とベトナム資本が先を争うように現地に入り、川底の土砂をさらった。砂金1グラム当たり、掘り返される土砂は1トンにも上る。アッタプーの自然環境は激変し、周囲に住む村々では呼吸器や皮膚に異常を訴える子供たちが続出するようになった。

 予期せぬ人災のダム決壊事故から1年。ようやく復興が始まったのもつかの間、現地の人々は中国やベトナム資本によるかつての悪夢に再び苦しめられようとしている。被災者の補償もほとんど行われていない。いつまでも続けられる強者が弱者を思いのままにしようとする構図に、国際社会はもう少し目を向けたほうがいい。(在バンコクジャーナリスト・小堀晋一)

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