検証・ふるさと納税

ゆがめられた地方税制 返礼品競争で新たな税源偏在リスクに

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 「ふるさと納税は、税制そのものを崩壊させる段階に入った」。東京都世田谷区の保坂展人区長は1日、共同通信の取材に応じ、税源流出が続く状況に危機感を示した。

 世田谷区の2019年度のふるさと納税による住民税の減収額は約54億円に達する見込みだ。住民税収の4.3%に相当し、保坂氏は「さらに拡大すれば、予算不足で公共施設の建設が止まるなど深刻な影響が出る恐れがある」と懸念する。

 制度の現状を疑問視するのは、首都圏の首長だけではない。兵庫県の井戸敏三知事は「返礼品合戦でお金を集めれば良いという状態になっている。返礼品をやめるべきだ」と苦言を呈する。

 ふるさと納税は07年、当時の菅義偉総務相が構想を打ち出し、08年度に制度がスタートした。導入に向けた総務省研究会の座長だった島田晴雄・慶応大名誉教授は「秋田出身の菅氏は、地方の衰退を防ぎたい気持ちが強かった」と振り返る。

 ただ制度開始から数年にわたって利用は伸び悩んだ。そこで第2次安倍政権で官房長官となった菅氏は自ら主導して15年度に制度拡充を実現。自己負担2000円で寄付できる額の上限を2倍に拡大した結果、利用者は急増した。

 少しでも多くの寄付を獲得しようと自治体間の返礼品競争は激しさを増した。当時、総務省自治税務局長として実務を担った平嶋彰英氏は「競争の過熱はある程度予見できたが、菅官房長官ら関係者に状況を理解してもらえる適切な説明ができなかった。有効な対策を取れず混乱を招いた責任を感じている」と語る。

 ふるさと納税は導入時、生まれ故郷や応援したい自治体に寄付することで、都市と地方の税収偏在の是正につなげる効果も期待された。だが豪華な返礼品を贈る自治体に多額の寄付が集まる構図は固定化し、新たな偏在を生み出している。

 18年度の寄付総額が全国トップの約498億円で、全自治体の約1割を占めた大阪府泉佐野市。アマゾンギフト券を配布するなど大々的にPRし、多額の寄付を集めたことが問題視され、6月の新制度から除外された。

 しかし財源獲得を自治体間の競争に委ねる、ふるさと納税の仕組みそのものに欠陥があるとの見方も根強い。青木丈香川大教授(租税法)は「ふるさと納税の存在自体が国と地方の税財政システムをゆがめている。寄付という原点に戻って制度設計を一から考え直すべきだ」と指摘する。

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