エジプトの首都カイロの過密ぶりを解消するため首都機能移転が予定される場所で、高さ日本一のビル「あべのハルカス」(300メートル、大阪市)を上回る「アフリカ大陸一の高さ」を目指す超高層ビルの建設計画が進んでいる。巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として、中国企業が工事を手掛ける。中国が資源や拠点確保の思惑から、人口と経済が拡大するアフリカの開発を後押しする象徴といえる。
アフリカ連合(AU)の輪番議長国を務めるエジプト。8月上旬、カイロの東約50キロ、酷暑の砂漠に「埃及新行政首都」と書いた漢字の看板の向こうで巨大クレーンがそびえていた。2月着工した新首都の中心ビル「アイコニックタワー」(385メートル)の工事現場だ。中国国有系大手ゼネコン「中国建設」が工事を進める現場を訪れると、サングラス姿の中国人警備員ら約20人に囲まれ「撮影は許可できない」とカメラを一時取り上げられた。重機が行き交い、労働者が機敏に働く一帯は、のんびりとしたカイロの日常とは別世界だ。
シーシー大統領が注力する新首都の面積は東京23区よりやや広い700平方キロ、事業費は450億ドル(約4兆8000億円)。建設の原動力にはアフリカの巨大人口がある。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、2018年に13億人のアフリカ人口は50年に25億人に倍増。エジプトも数年で1億人に達し、都市の近代化・高層化が喫緊の課題だ。