国内

RCEP閣僚会合 年内妥結へ機運も依然隔たり

 RCEP交渉の閣僚会議は、共同声明で「妥結の緊急性は増している」との文言を盛り込み、早期妥結を目指すことでは一致した。米国の保護主義的な動きなどを背景に、「中国をはじめ参加国の間で、妥結に向けた機運が高まっている」(日本政府高官)からだ。ただ、関税など各国で立場の違いが鮮明な分野では、大きな進展は見られず、目標とする年内妥結に向け残された課題も多い。

 RCEPの約20の交渉分野のうち、税関手続きの円滑化など半数は合意済みだ。だが、今回は新たな分野で合意できなかった。

 交渉参加国の間で隔たりが大きいのが、関税と知的財産権の分野だ。関税では日本やオーストラリアなどが高いレベルの自由化を求めるのに対し、対中貿易赤字に悩まされるインドは、自国産業を守るため関税の引き下げや削減に慎重な姿勢を示している。

 これに対しRCEPを対米貿易摩擦の対抗軸にしたい中国が「妥結に向け積極的な姿勢に転じている」(経済産業省幹部)という。それでも知的財産権の分野では、中国は必ずしも前向きではないとされる。

 また、妥結ムードに水を差しかねないのが韓国の動きだ。韓国は8月のRCEP交渉の閣僚会議で、日本の対韓輸出管理の厳格化を批判した。今回の会議ではこの件で韓国側の発言はなかったというが、今後の出方は予測できない。

 そもそも輸出管理の問題と多国間の貿易交渉はまったく別の問題で、他国は介入する姿勢を示していない。RCEP交渉の妥結には関税引き下げなどで日韓の2国間交渉も必要になるが、再び韓国が貿易管理の問題を持ち出せば、RCEP交渉そのものにも支障をきたしかねない。

 RCEPは実現すれば世界の人口の約半分、貿易額と国内総生産(GDP)のそれぞれ約3割を占める広域経済圏となる。米中貿易摩擦の激化で世界経済の不確実性が増す中、11月に予定される首脳会議での妥結を目指すRCEP交渉は正念場を迎えている。(大柳聡庸)

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