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中国、進む物流サービスの高度化 (1/2ページ)

 中国政府は近年、物流に関する政策を相次ぎ発表している。その中では特に、「電動化」や「スマート化」に注目していることが特徴である。(野村総合研究所・張鼎暉)

 電動化政策については、新エネルギー車(NEV)の利用促進に重きが置かれている。中国の特に大都市は、渋滞緩和対策としてトラックに走行制限をかけているが、新政策では電気自動車(EV)トラックについて規制を緩和・解除する動きがみられる。

 EVトラックを優遇

 北京市は、「NEV物流配送車両優先通行業務実施案」を発表し、4.5トン以下のEVトラックを対象に都心の環状線内での通行制限をラッシュ時を除いて解除した。広東省深セン市、天津市は、高速道路の通行料を優遇する政策も打ち出している。

 スマート化政策は、主に物流コスト削減や物流効率向上を目的に作られている。速達サービスやコールドチェーンといった物流ソリューションの高度化に伴い、それに対応した安全・安定的な物流網の整備促進で関連産業を発展させ、地域経済の活性化を狙うものである。

 物流業界ではこれまで、自らトラックを保有する傾向が強かった。しかし、需要拡大でトラック保有にかかるコスト(車両購入や運営、メンテナンスなど)が高まり、利益率の低下が問題に。平日と休日・祝日で需要格差が大きいことや、コスト競争の激化で安定した需要が見込めなくなってきていることも拍車をかけている。

 このため業界では、コスト(特に固定費)削減のため、安定的な需要は自社トラックで対応し、不安定な需要を外部業者にアウトソーシングする企業が増えている。トラックを保有せず荷主と個人トラックドライバーをマッチングするベンチャーも誕生し、大都市を拠点に事業規模を拡大している。

 今後、政策に基づきトラックの電動化が進み、スマート物流システムの完成度が高まると、積極的に外部リソースを活用する動きが加速すると業界関係者はみる。その背景としては、以下のような点が挙げられる。

 外部リソースを活用することでまず、EVトラックのバッテリーをメンテナンスするための各種追加コストを直接的に負担しなくて済む。電池の劣化が生じると物流効率が下がるため、大量のトラックを保有していると資産価値低減が看過できなくなる。また、マッチングサービス事業者に個人トラックドライバーが加盟する動きが進み、アウトソーシング先の確保が昔に比べて難しくなくなった。

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