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米中貿易摩擦が激化するなか…不公平な競争招く「産業補助金」 (1/3ページ)

 米中貿易摩擦が激化するなか、中国の産業補助金が注目されている。米トランプ政権は習近平政権に産業補助金制度を見直すよう要請しており、10月に予定されている米中通商協議でもこの問題が議論されるとみられる。本稿では、中国の産業補助金の概要をみたうえで、その抱える問題を取り上げたい。(日本総合研究所・関辰一)

 年増加率13.9%増

 中国の産業補助金は、十分な投資収益を期待できない事業ではあるものの、国家戦略や産業政策上重要な事業に携わる企業に給付されるケースが多い。中国政府と地方政府はそれぞれが補助金を支給している。上場企業の有価証券報告書から判断すると、地方による補助金の方が多い。

 近年、中国では産業補助金の総額が増加している。全上場企業3683社の有価証券報告書(年報)を集計すると、2018年の補助金総額は1551億元(約2兆3520億円)と前年から196億元増加した。ここ5年間の増加率は年平均13.9%に達する。

 この背景として、以下の2点が指摘できる。第1は、産業政策の強化である。中国政府は近年、消費や生産の各分野における多様なデータをIoT(モノのインターネット)、センサーなどで収集・蓄積し、ビックデータや人工知能(AI)などを駆使して分析することで、新規ビジネス創出や産業の活性化を狙っている。15年に産業ビジョン「中国製造2025」を策定し、その中で半導体やAI、電気自動車(EV)などを重点分野に定めた結果、こうした分野向けの補助金が拡大した。

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