国内

政府税調、目新しさ無く問われる存在意義

 政府税制調査会(首相の諮問機関)が26日に取りまとめた中期答申は、税制を社会の変化に対応させていくことの重要性を訴えた一方、消費税率を10%に引き上げた後のあり方への言及もないなど「全体として目新しさはない」(関係者)内容となった。政府税調の存在意義が問われそうだ。

 「国民的議論が盛り上がった段階で、政治的に議論する問題だ」。政府税調の中里実会長(東大教授)は同日の記者会見で、消費税率10%超への議論を答申に盛り込まなかった理由をこう説明した。

 ただ、高齢化が急速に進む日本の税制を考える上で消費税の議論は避けては通れない。この日の総会でも複数の委員が消費税の議論ができていない点を指摘。財務省OBで、東京財団政策研究所研究主幹の森信茂樹氏も「政権への忖度(そんたく)で政府税調に本来求められている役割が果たせていない」と語る。

 森信氏によると、政府税調の最大の役割は中長期の視点で税制を議論し、正論を示すことにある。最終的な決定権は、もう一つの税調の与党税調が握っており、これまでも政府税調の意見が否定されることはあったが「今のように議論すらさせてもらえないようなことはなかった」という。

 そもそも政府税調の立ち位置はあいまいだ。昭和50年代から自民党税調会長を長く務めた山中貞則氏は、政府税調について「軽視ではなく、無視している」と発言。一方、石弘光(元一橋大学長)氏が政府税調の会長だった平成12~18年は、政権に正面から消費税増税を提言し存在感を示した。

 ただ、政権や人事で政府税調の力関係が変化するようでは、あるべき税制の姿は描けない。政府税調のあり方も含めて再検討すべき時期に来ている。(蕎麦谷里志)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus