主張

外資の出資規制 安全保障上の対応徹底を

 政府が安全保障上、重要とする特定業種の日本企業について、外資の出資規制を強化する。

 海外の企業や投資家が株式を取得する際、届け出が必要となる保有割合の基準を、現行の「10%以上」から「1%以上」へと引き下げる。

 法の網を広げ、これまでなら見逃された投資にも監視の目を向けるのが狙いである。国の安全にかかわる企業の経営が外資に握られたり、軍事転用可能な技術が海外に流出したりすることは許されない。厳しく管理すべきは当然である。

 もちろん、念頭には先端技術の国産化を急ぐ中国がある。技術の窃取もいとわぬ中国の手法は、かねて批判されてきた。これを安全保障上の脅威とする認識は、中国との覇権争いの渦中にある米国だけでなく、日欧も共有する。

 日本が規制の抜け穴となるわけにはいかない。これを避けるためにも制度の実効性を高めるよう運用に万全を尽くす必要がある。

 臨時国会に外為法改正案を提出する。現行の外資規制は武器、原子力、サイバーセキュリティーなどの業種について、投資の事前届け出を義務付け、必要な場合は投資中止を命じたり、株式売却を命令したりできる仕組みだ。

 今回の措置は対象の取引要件を厳格化したものだ。1%以上という基準は株主総会での議題提案権を得られる比率である。ほかにも取締役を送り込んだり、重要事業を譲渡したりする場合も届け出対象とした。機微技術への不当な接触や取得を封じる上で有用だ。

 一方、安全保障とは無縁の資産運用には、事前届け出を免除する制度も導入する。経済活性化には海外からの投資促進が欠かせない。必要性の薄い規制には手間をかけず、経営支配や技術流出の阻止に絞った審査に徹すべきだ。

 安全保障に絡む外資規制の強化は最近の国際潮流である。米国は昨夏、対内投資だけでなく輸出管理を強める法律も成立させた。欧州連合(EU)は投資審査の対象業種などを示す規則を決めた。欧州各国にも同様の動きがある。

 制度は各国それぞれであり、もともと広範で強力な規制をかけられる米国と同じ制度を、日本が作ることは現実的でない。そうだとしても日米欧で制度運用の調和を図る意味は大きい。情報を共有し、協調行動を取れるよう、連携を密にすることが肝要である。

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