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プチエンゼル投資、じわり拡大 年間上限50万円、子育て感覚で支援 (2/2ページ)

 シード期には不可欠

 創業時の資金不足に悩むベンチャーの問題解決を担うのがエンゼルだ。引退した起業家や実業家が多く、成功して稼いだ資金を後進の育成に充てる。欧米ではVCと並ぶ資金供給源だが日本では探すのが難しいと言われる。

 水深100メートルの海中旅行を楽しむという事業に挑むオーシャンスパイラル(東京都港区)は8月、ファンディーノで1035万円を調達した。開始から1分54秒という過去最速で募集額の上限に達した。

 株式投資型CFでの資金調達は初めて。これまで頼ってきたのは主にエンゼル。米沢徹哉社長は「壮大な取り組みに機関投資家の理解を得られず、足を使ってエンゼルにプレゼン。夢を正しく伝えることで株主になってくれた」と語る。

 ただ16年11月の創業以降、「約3000人と名刺交換し、その紹介でやっと巡り会えた。日本でエンゼルに出会うのは難しい」と吐露する。シード期にはプチエンゼルの支持が不可欠といえる。

 実は、同社は立ち上げ時にファンディーノでの資金調達を目指した。「当時はビジネス構想のみで収益計画の根拠も不透明。ワクワクしてもそれだけでは無理」(JCCの高津鉄矢・案件管理部長兼発行者審査部)ということで持ち越された。

 それだけ審査は厳しい。M&A(企業の合併・買収)のデューデリジェンス(資産査定)で培った目利き力などを持つ監査法人経験者やVC経験者など多士済々なスタッフが財務諸表や事業計画などをプロの目でチェックする。プチエンゼルの一人は「JCCの厳しい審査が投資の前提」と打ち明ける。

 来春めど新市場創設

 プチエンゼルに優しい仕組みも創った。ファンディーノを通じてベンチャーの新株予約権を購入するサービスで、投資家保護に重きを置いた。

 9月の発表会で柴原祐喜代表取締役は「VCからの資金調達を想定するベンチャーが使う仕組みで、(プチエンゼルにとって)こうしたベンチャーへの投資機会が増える」と説明する。新しいサービスを使うとプチエンゼルは、VCが目をつけた将来有望株を手に入れられる権利を得る。投資リスクも減る。

 JCCはさらに、来春をめどに未上場株の相対市場を創る予定だ。エグジット機会がIPOやM&Aなどに限られる中、プチエンゼル同士の株式交換の場を設けることで投資への安心感を高める狙いだ。

 ベンチャーの初期段階から投資して成長を楽しむのがプチエンゼル。1人当たりの投資額は少なくても集まれば多くなる。成長資金が集まらず頓挫するベンチャーが少なくない中、支援者にもなってくれるプチエンゼルに秋波を送る企業が増えそうだ。(松岡健夫)

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