台風19号による被害は、農業分野にも広く及んでいる。川の氾濫による果樹や水稲などの農地への浸水、暴風雨によるハウスの破損や倒壊、農業用のため池や水路の決壊など数多くの被害が発生。福島県では被害総額が100億円を超える可能性も指摘されている。ただし被害の全容はいまだつかみ切れておらず、供給不足は価格上昇につながるおそれがある。
福島県では16日時点で、25市町村での農地や農業用施設の被害が30億円超になることが判明。ただ、調査には農産物の被害額は入っておらず、「全体で100億円を超えるのではないか」(県農林企画課)ともみられている。
また収穫期が近かったリンゴの被害も目立つ。長野県小布施町では千曲川の氾濫で、河川敷で栽培していたリンゴ畑が浸水し、壊滅状態となった。同町産業振興課は「被害額は16日時点で少なくとも9000万円超にのぼっている」と話す。
このほか収穫期を迎えていたナシやカキが枝折れや落果などの影響を受けた。東北地方のコメ、ハウス栽培のイチゴ、キュウリ、トマトなども大きな被害が出た。茨城県は農作物の被害だけで8億円超にのぼったという。
一方、長野県や埼玉県では被害が算定できておらず、「水が引いたあと調査していく」(埼玉県)としている。農林水産省は、被害の全容解明を急ぎたい考えだが、「人命優先。時間がかかる」としている。
台風による出荷減少は価格上昇にもつながっているもようだ。東京都中央卸売市場大田市場によると、15日の群馬産キャベツ1箱(10キロ)は取引量が多い相対取引の中値で1080円となり、12日より25%割高だった。長野県産のリンゴ「シナノスイート」も55%ほど値上がりしたという。