今年もこの季節が近づいている。11月11日に開催される、中国では「双十一」「ダブルイレブン」、日本では「独身の日」と呼ばれる中国国内最大級のEC(電子商取引)商戦である。
2009年当初は、アリババグループ(「淘宝網(タオバオ)」、その後は「天猫」「天猫国際」)のイベントであったが、この10年間でライバル企業の京東(JDドットコム)、さらには唯品会(VIP)、近年注目されている●多多(ピンドゥオドゥオ)など、ほぼ全てのECプラットフォームが参入し、その規模も膨れ上がった。
同商戦は昨年に10周年を迎えたが、アリババ創始者・馬雲(ジャック・マー)氏在任最後の年であったことや、10周年のオープニングセレモニー(日本の渡辺直美も出演)の華やかさ、開始2分で約1500億円、1日で約3.5兆円と「楽天市場」1年間の売り上げに相当するオーダー金額など、日本のメディアもその圧倒的規模に注目。報道量が増加し、多くのメディアで「独身の日」や「ダブルイレブン」というタイトルが踊り、日本でも知られるようになった。
では今年はというと、やはり話題は絶えない。
最大の注目は、米中貿易摩擦の影響がどこまで現れるか、という点である。年間最大級の商戦の購買への影響度は、金融市場関係者だけではなく、中国消費者をターゲットとする日本のメーカーにとっても大きな関心事である。
しかも日本国内では中国経済に関して「小売り総額の伸びが鈍化し、消費減退傾向」といった報道がある半面、中国市場を積極開拓している企業からは「減速感はない」といったメッセージも出ており、情報が錯綜(さくそう)していることから、それを見極めるポイントとして「ダブルイレブン」が注目されている。
最大規模の商戦の結果は、すなわち中国の消費者の経済状態を表すという理解である。
ただ気を付けなければならないのは、単純に昨年よりも「売り上げが上がった」イコール「中国経済は大丈夫」「売り上げが下がった」すなわち「経済が悪化している」という表面的な判断をしてはならないということだ。
なぜならダブルイレブンは現在、「お目当て商品をより安く購入できる商戦」であり、中国消費者も「年間のどの商戦よりも安い」と認識している。そのため、ダブルイレブンで日本ブランド商品を購入するにしても、その理由が「経済的に余裕があるから好きなだけ買う」のか、それとも「懐事情が厳しいため、安いタイミングで買いだめする」のか、実態によってその印象が大きく異なる。