海外情勢

日本と逆に消費税を廃止したマレーシア、早くも復活論 (2/2ページ)

 しかも、“痛みを伴って”公約を実現したわりに、与党側の支持率にはつながっていない。もともとGSTでも食品などの日用品の多くは対象外。GSTが廃止されたとはいっても、消費者側にさほど恩恵が得られた感覚はないとされる。

 地元調査会社ムルデカ・センターの集計によると、昨年5月には87%だった希望連盟の支持率は、今年8月には過去最低の35%にまで低下した。マハティール氏は「(調査が)不正確だ」と反発したが、GST撤廃への評価よりも、多数派マレー系住民を優遇する「ブミプトラ政策」の見直しに反発する声が強まったことなどにより、政権に逆風が吹いている。

 「マハティール政権で『何かが変わる』という漠然とした期待が大きかったことから失望感が漂っている」とは地元ジャーナリストの分析だ。

 消費税は「公平な税」

 野党側からは政権批判と同時に、GST復活を求める声が上がる。地元メディアによると、政府系シンクタンク、マレーシア経済研究所のサリ所長も今月1日、「GSTは公正なシステムだった。貧しい人々が影響を受けると指摘する人もいるが、低所得層を保護するため、(日用品などに)除外条項がある」として復活を求めた。

 こうしたなかでマハティール氏自身の発言も揺れ動いている。3日には「GSTがSSTより優れているなら再導入を調査する」と発言し、GST復活を排除しない意向を示した。かと思えば、8日には「GSTを再度導入する理由はない」とも発言している。

 GSTが復活するにせよしないにせよ、「国家百年の大計」ともいえるのが税の制度設計。94歳のベテラン政治家であるマハティール氏でも扱うのは難しいようだ。(シンガポール 森浩)

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