石油施設攻撃でイランとの緊張が高まるサウジアラビア。ムハンマド皇太子が進める改革で雇用や自由化の恩恵を受ける若者らは紛争に消極的で、ネット上では「イランと争う時間はない」との意見も。皇太子の権力独占や強引な施策への批判は潜在しているが、若者らの声が改革を支えており、紛争抑止につながるとの見方がある。
批判勢力を抑える
首都リヤドのショッピングモール。9カ月前に初めて就職した20代の女性店員、サルワ・バサさんは「自分の収入が欲しかった。今度は運転に挑戦したい」と全身を覆う衣装「ニカブ」のまま声を弾ませた。コンピューター店に勤める20代のミシャアル・ムタイルさんも、1年前に働き始めた。「改革のおかげで就職でき人生の目標が見えた」と喜ぶ。
サウジの人口は30年間で2.4倍に増加。国民の半数以上を占める若年層のうち約3割が失業者とされる。原油依存からの脱却と経済多角化が急務で、皇太子は2016年、女性や若者の社会進出促進や、海外投資、産業振興につながる改革「ビジョン2030」を立ち上げ、イスラム教の穏健化も進めた。
厳格な宗教解釈で禁じられていた女性の運転や、映画、演劇の上演などが次々に自由化された。出稼ぎ外国人が減り、職場のサウジ人が増える「サウジ化」も加速。地元紙によると、小売り部門のサウジ人労働者は昨年比で既に11万人増えた。
ロイター通信は3日、国防相を兼任する皇太子が「石油施設攻撃を防げなかった」として、一部の王族や経済界から不満が出ていると伝えた。だが若者の歓迎ムードが、皇太子を批判するイスラム保守層や宗教勢力の発言力を抑えている。
9月下旬に外国人の観光ビザの解禁が発表された際にも、「仕事が増える」など若者らの好意的な意見がツイッター上で広がった。カナダのネット企業によると、サウジのツイッター使用率は世界トップ。イランとの緊張では好戦的な意見の一方「改革で忙しい。失うものがないイランと戦争をすべきでない」と自制を求める声が飛び交う。
当局は“世論”注視
絶対君主制で自由な言論が不可能に近いサウジでは、世論の動向を政策に反映させるシステムは存在しない。だがサウジ当局は、イスラム過激派対策で得たネット上の監視技術を駆使し、膨大な「つぶやき」を抽出して若年層の反応を探っているとされる。
外交筋は「改革で人生を楽しんでいるサウジの若者は紛争を避けたいはず。当局はネットを注視している」と指摘し、若者の声が紛争の歯止めになり得るとの見方を示した。(リヤド 共同)