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香港デモの背景に格差拡大 1人当たり総収入は順調に増えているが…

 「逃亡犯条例」改正案に反対して6月から始まった香港のデモはいまだに収束の気配がみられない。2014年に発生した香港の反政府デモ(雨傘運動)と比べると、参加者の規模も格段に大きくなっている。1997年の香港返還から20年余り。香港は一体、何が変わってしまったのだろうかと思い、香港の諸統計を改めて見直してみた。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 まず驚いたのは、所得分配の不平等さを測るジニ係数の高さである。ある非政府組織(NGO)が発表した報告書によると、2016年のジニ係数は0.539にまで上昇している。ジニ係数は0.4を超えると騒乱が多発するようになり、0.5を超えると騒乱が慢性化するといわれている。香港は慢性的に騒乱が起きても不思議ではない状況にある。

 1人当たり総収入は順調に増えている。失業率をみても、このところ3%台が続いており、昨年には3%台をも割り込んだ。住民に不満はないかのように見えるが、実は格差の拡大が進んでいるのだ。同報告書によると、上位10人の富豪の所得が香港の域内総生産(GDP)の35%を占めている。一方で、人口の96万人が生活貧困にあえいでいる。とりわけ住民の生活を苦しめているのが住宅価格の高騰で、08~14年の6年間に135%も上昇しているという。

 もう一つ注目すべき数字は、人口が14年の725万人から18年には748万人にまで膨らんでいることだ。とりわけ18年は前年より7万3300人も増えている。香港でも少子化が進んでおり、出生数から死亡数を引いた人口自然増はわずかに6300人でしかない。残りは流入人口なのである。

 流入人口の約7割は「単程証」の所有者である。「単程証」とは、香港人の中国本土配偶者および中国本土で生まれた子供を呼び寄せる移民政策で、香港返還から昨年末までに既に100万人を超えている。

 地元住民の間では、本土から入り込んでくる中国人が、格差拡大を助長しているのではないかと不満を強めている。これらの移住者は香港経済の発展に貢献している、と林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は訴えている。しかし、中国本土で成功した金持ちが香港に入り込んで不動産を買いあさり、住宅価格を押し上げているのが現実だ。

 こうした日頃からの生活上の不満が、逃亡犯条例改正案をきっかけに、一気に爆発したといえようか。

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