日本や中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の閣僚会議が来月1日にバンコクで開かれ、4日に開く首脳会議での妥結を目指し詰めの協議を行う。対米貿易摩擦が激化する中国が交渉に前向きになるなど、妥結に向けた機運は高まっている。ただ、関税撤廃など重要分野では各国で利害の対立が残り、予断を許さない状況だ。
「閣僚会議では残された課題について政治レベルでの議論を行う」
29日の記者会見で、梶山弘志経済産業相はこう述べ、妥結に向け意欲を見せていた。
だが、閣僚会議に梶山氏は欠席。代わりに牧原秀樹経産副大臣が出席することが決まった。前経産相の菅原一秀氏が公職選挙法違反をめぐる疑惑で辞任し、関西電力役員らの金品受領問題も尾を引いている。このため、梶山氏は国会対応に専念し、閣僚会議の出席を断念したとみられる。
牧原氏は議員になる前の2003年に経産省に入省し、通商交渉を担当した経歴もあるため、「閣僚会議の議論でも問題はない」(経産省幹部)という。
13年から始まったRCEP交渉では、関税撤廃のほか、知的財産権の保護、電子商取引といったルール分野を議論している。参加国はトランプ米政権の保護主義的な動きに危機感を強め、年内妥結を目指すことでは一致している。
ただ、幅広い分野での関税撤廃を求める日本やオーストラリアなどと、自国産業を保護するため関税撤廃に消極的なインドなどとの溝は埋まっていない。とくにインドは対中国赤字の拡大に警戒感を抱き、慎重な姿勢を崩していない。
ルール分野でも対立がある。知的財産権保護などの高水準なルール整備に消極的な中国などと、質の高い協定を目指す日本やオーストラリアなどとの間には隔たりがある。
一方、RCEPの妥結には日韓の合意も必要だ。梶山氏は29日の取材で「韓国ともやりとりしている」と述べ、日韓関係の悪化がRCEPに影響を及ぼさないとの見方を示している。(大柳聡庸)
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主なRCEP交渉参加国の主張や立場
日本、豪州
・幅広い分野での関税撤廃・削減を要求
中国
・妥結に積極的。知的財産権の保護などには後ろ向き
インド
・対中貿易赤字を受け、幅広い関税削減に慎重な姿勢
ASEAN各国
・柔軟に対応、年内妥結に前向き