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薄氷の「様子見」へ転換、なお利下げ含み FRB3回連続利下げ

 今夏から3度の連続利下げに踏み切った米連邦準備制度理事会(FRB)が、景気を様子見する姿勢に転じた。米経済は個人消費が堅調だが、米中貿易摩擦を受けた陰りが設備投資などに現れ、好不調が交錯する「まだら模様」となっている。今後の金融政策が「経済データ次第」と強調するパウエル氏は、依然利下げ方向の政策修正を視野に入れ、景気動向を点検していく構えとみられる。

 米商務省が30日発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は年率換算1・9%増。個人消費が2・9%増となるなど、底堅い成長を保った。ただ、設備投資は3・0%減と下落幅が拡大し、企業の先行き警戒感が根強いことが鮮明になっている。

 パウエルFRB議長は30日、トランプ米政権が「中国との『第1段階』合意に署名する可能性」があると言及。企業の景況感を悪化させている主要因である米中摩擦の緩和に期待を寄せた。また、英国の欧州連合(EU)離脱問題にも触れて、「合意なき離脱のリスクはかなり減少したようにみえる」と指摘。欧州経済を混乱させる懸念が遠のいたとの認識を示した。

 ただ、こうしたリスク要因の行方は見通せない。米中の貿易協議は緩和と激化を繰り返してきた。英国は12月の総選挙実施を決め、結果次第では内政の混乱が深まりかねない。

 パウエル氏は「景気を牽(けん)引(いん)している」と好調な個人消費に目を細める。しかし製造業を中心とした投資減退や貿易の低迷が企業業績を下押しし、雇用や賃金に悪影響を及ぼせば、消費の足を引っ張りかねない。パウエル氏も、「われわれが監視しているリスク要因だ」と認めた。

 FRBは当面は利下げ効果が出て景気拡大を支えるとみており、年内4度目の利下げ観測は遠のいた。ただ、再び金利引き下げを必要とするリスク要因が払拭されたわけではなく、金融市場は年明け以降の利下げを見込んでいる。パウエル氏は米国景気が「逆風に対して強(きょう)靱(じん)だ」と述べたが、今回表明した「様子見」姿勢は短命に終わる可能性をはらんだ薄氷の方針修正にも映る。

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