今回の公正取引委員会の調査報告書は、プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業が強い立場を利用して、取引先企業に不利益を強いる構図を明らかにした。巨大IT企業の地位は高まっており、「優越的地位の乱用」に歯止めをかける施策が求められている。
公取委が31日、「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業のインターネット通販などに関する取引実態調査の報告書を公表した。出品者から「出品手数料を一方的に変更させられた」との意見が寄せられるなど、中小企業も多い出店者に不利な契約を結ばせている取引形態が浮かび上がった。公取委は「ネット通販業界の慣行改善が目的」とし、独占禁止法の適用も視野に監視を強める考え。
今回の調査では、巨大IT企業が、検索結果の表示や、決済方法、手数料の設定などで自社や関連会社を優遇している実態が報告された。また「取引先のデータを利用して、自社商品を開発し後追い販売」しているなどの指摘や、「ほかのネット通販サイトと同等かもしくは価格を下げるよう要請」などの事例も挙げられた。
出店者の多くは中小企業で、独自で販路を開拓するのは難しく、ネット通販やアプリ配信で販路を握る巨大IT企業から不利な条件を強いられた場合、受け入れざるを得ないのが実情だ。巨大IT企業側は「販売価格や品ぞろえを強制することはない」などと否定するが、公取委は「価格を同等にする要請があれば競争が阻害される」と指摘。検索の表示については「検索上位を広告枠や自社関連商品とする場合には、その旨を明らかにすべき」としている。
経済産業省によると、ネット通販市場は平成30年で前年比9%増の17兆9845億円に伸びており、巨大IT企業の地位がさらに高まっているのは間違いない。巨大IT企業への過度な規制強化にはデジタル分野での技術革新の停滞につながるおそれも指摘されているが、監視強化の必要性も高まっている。