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大阪・池田市が制作した人気動画の宣伝看板を撤去 前市長目立ちすぎ?

 大阪府池田市が今年4月の市制施行80周年を記念して制作し、複数の広告動画賞を受賞するなど話題を集めたPR動画関連の巨大看板やポスターが8月、一斉に撤去された。背景には、動画には制作当時の市長が主要キャラクターとして登場しているのに、4月の市長選で別の市長に代わったという事情がある。動画の公開は11月5日までだが、専門家は「価値のある動画なのだから、もっと積極的に活用すべきだ」と訴えている。(張英壽)

 巨大看板があった市役所前には現在、白い土台だけが残る。「看板には前市長の顔は描かれていなかった。市長が交代しても、今年度末までは残せると思っていたが…」。市の担当者はそう肩を落とす。

 PR動画の題名は「池田の大決闘 ひよこちゃんvsウォンバット」。同市発祥の日清チキンラーメンのキャラクター「ひよこちゃん」と市内の動物園で人気のウォンバットが巨大化し、「カップヌードルミュージアム 大阪池田」などの観光名所を次々と破壊。臨場感あふれる大阪弁と「入場無料!」などお得感をアピールするテロップで、同市の魅力をテンポ良く紹介していく。

 昨年11月6日に動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開を始めると、すぐに人気に。市はこの人気を観光の呼び水にしようと同年12月、市役所玄関前に幅5・8メートル、高さ1・8メートルの巨大看板を設置した。さらに今年2月には、市内の名所3カ所にも別の宣伝看板を設け、市役所内にポスターを掲示したり、動画で取り上げた名所10カ所のガイドマップを作成したりした。

 動画の公開は声優との契約などで今年11月5日までで終了するが、市はその後もまちおこしのツールとして活用、PRやマップ配布を続けていく方針だった。

 だが、動画には倉田薫前市長が「ウルトラ市長」に変身する主要キャラクターとして登場しており、市長の交代で、宣伝事業に暗雲が垂れ込めた。4月の市長選に倉田氏は出馬せず、倉田氏の長男が後継候補として立候補したが、落選。世襲を批判して初当選した冨田裕樹市長は8月30日、宣伝看板やポスターをすべて撤去し、ガイドマップも回収してしまった。

 撤去の理由について、冨田市長は「『動画は前市長の宣伝ではないか』『市役所前に宣伝看板を置くのは品がない』といった声を多く聞いた」と説明する。

 一方で、動画の再生回数は前編、後編を合わせて計18万回を超えるなど人気は継続。CM業界で国内最大級の「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」のフィルム部門Bカテゴリーでシルバー賞を獲得したほか、ネット上の広告動画を表彰する「BOVA」広告主部門グランプリを受賞、アニメなどを活用した作品に贈る「アニものづくりアワード」でも入賞している。

 CM業界に三十数年にわたり関わってきた「ぐろ~かるCM研究所」の鷹野義昭所長は「多くの制作会社の作品が参加するACCの受賞はすごいことで、池田市の動画の価値が証明された。契約期間中であれば動画は市民の資産でもあり、もっと積極的に活用すべきだ」と指摘している。

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