国内

潮目変わった大阪IR誘致 事業者が横浜と両天秤で“条件闘争”の動きも

 大阪府市によるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致で、参入を目指すIR事業者が米国とアジアの3社に絞られた。今後は大阪府市がどの事業者をパートナーに選定するかが焦点だ。ただ、8月に横浜市がIR誘致に名乗りを上げたことで、大阪を候補地とする3社からも、自治体を天秤(てんびん)にかける“条件闘争”の動きが出始めた。早期開業や鉄道整備への資金拠出など、府市が事業者に求める要求水準が高すぎるとの見方もあり、府市がどう歩み寄るかが問われそうだ。(黒川信雄)

 事業者「まだ分からない」

 「大阪IRの事業案の正式募集(RFP)に応じるかは、まだ分からない」

 大阪参入の意向を示す3社のひとつで、香港に本社を置くギャラクシー・エンターテインメント・グループのテッド・チャン日本地区最高執行責任者は23日、産経新聞のインタビューにそう言い切った。

 RFPへの不参加は、大阪撤退を意味する。チャン氏は、他都市のRFP実施時期が大阪と重なれば「どちらかを選ばねばならない」とし、横浜や東京も視野に入れていると明かす。

 さらにチャン氏は、大阪府市が求める2025年大阪・関西万博の前年の開業は「部分開業にならざるを得ない」との見方を示した。大阪湾の人工島、夢洲(ゆめしま)に予定されるIRの敷地は49ヘクタールにのぼり、開発期間を切り詰めれば「IRの品質を担保できない」ためだ。

 マレーシア企業を母体とするゲンティン・シンガポールも、大阪参入を目指すが慎重姿勢を崩さない。同社は24日からインテックス大阪(大阪市住之江区)で開かれているIR関連展示会に出展中だが、演出は控えめで、説明会も開かずビデオ上映にとどめた。

 同社の日本法人は9月、関東財務局に3500億円の円建て債の発行登録をした。IR建設の資金調達とみられるが、候補地を大阪に絞ったかは不明だ。

 大阪オンリー戦略

 対照的なのが米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの連合だ。24日、大阪だけを目指す「大阪オンリー」戦略を発表。「競合他社とは違う」(MGM日本法人のエド・バワーズ最高経営責任者)と強調してみせた。

 連合は、オリックスが運営権を持つ関西国際空港など3空港とIRを連携させ、IRから国内各地へ送客する案を示すなど、具体的構想も固めつつある。

 ただ、万博前の開業については「行政と話し合っていく」(高橋豊典オリックスグループ関西代表)と慎重姿勢だ。

 大阪府の関係者は、横浜市がIR誘致に名乗りを上げたことで「大阪に参入意向を示していた7事業者が3社に減り、残った事業者の発言力が強まった。府市は『困った』と感じている」と打ち明ける。

 200億円「厳しすぎる」

 府市はIR事業者に対し、夢洲までの鉄道整備に200億円の拠出を求めている。だが、ある事業者は「府市が要請したから了承したにすぎない」と冷ややかで、条件が厳しすぎるとの本音をにじませる。

 大阪から撤退した米ラスベガス・サンズで国際開発部門を率いるジョージ・タナシェビッチ氏は24日、大阪市内で記者団に「複合的な要素を鑑みて、(大阪は)ベストの投資先ではないと判断した」と語った。進出先は横浜に絞る。

 国内大都市でのIR建設投資は1兆円規模にのぼるとされる。各事業者が利益の最大化を求める中、横浜の誘致表明により参入競争の潮目が変わった。大阪府市の誘致戦略は正念場を迎えている。

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