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東京モーターショーで変化の波を体感 自動車産業の祭典は「もっと輝ける」 (2/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 キッザニアゾーンで未来のユーザーをエンゲージメント

 まず変化を分かりやすく感じたのは、会場が東京ビッグサイトだけではなく、ゆりかもめで一駅、歩いて20分ほどの東京ビッグサイト青海展示棟やMEGA WEB、それを結ぶシンボルプロムナード公園まで含めて展示エリアとしたことです。元々は東京ビッグサイト東棟がオリンピックに向けた改修工事で使用できないことによる苦肉の策ではあると思うのですが、それを逆手に取り、広域会場全体にちょっとしたお祭り感があって良かったと思います。

 そして、子供向け職業体験型施設「キッザニア」とのコラボレーション企画”Out of KidZania in TMS2019”も非常に分かりやすい取り組みでした。実際に子供たちに参加してもらう就労体験の形で自動車に触れてもらう趣向です。今日本では、世代間ギャップなどという言葉をはるかに超えて、かつての多くの風俗文化が、例えば団塊の世代などかつての全盛期世代ごと廃れていこうとしています。

 プロ野球しかり、飲み会文化しかり、ほとんどのレジャーで参加率が下がっています。そんなことの背景には、やはり我々大人世代の余裕がなくなってしまい若い世代や子供たちにしっかり自分たちが楽しんできたものの素晴らしさを伝えきれなかった部分もあるのではないでしょうか?やはり子供は大事です。我々の子供時代にもスーパーカーの巡回展示イベントなどに触発されてスーパーカーブームが起こり、その当時の多くの子供が今でも自動車好きです。自動車という長期戦略を担えるパワーのある業界だからこそ、目先だけにとらわれない素晴らしい企画だと思いました。

 テンプレート自体をあえて壊すトヨタグループ

 各社のブースではやはりトヨタグループにひと際力が入っていました。そう豊田社長自身が、「このブースには、来年発売されるクルマは1つもありません」とアピールしたように、従来のお披露目されたニューカーを中心に基本は自動車を並べるというモーターショーの基本テンプレートを自ら崩す意志を感じました。トヨタ自動車のブースは全体が未来志向です。スタッフの衣装からしてスタートレックの乗組員のようなフューチャリスティックなもので、さあトヨタが考える未来を見せてやるぞ!という気合を感じるものでした。

 レクサスでは Lexus Senses Theater という体裁で、かつて限定販売された名車LFAが真っ暗闇の空間の中で、光の演出と音の演出で疾走する(実際の展示車両は止まったまま)という演出が最高でした。ちなみに筆者は実走するLFAを一度だけ目撃していますが、まさにあの音。クルマ好きならきっとシビれるはずです。

 うがったことを言えば、MEGA WEBという自社施設を会場として提供していて、そこで必要な車両展示ができるゆえ可能な割り切りとは言えるのですが、モーターショーのあり方に一石を投じたことは間違いありません。

 リアルイベントの価値が高まる時代

 それに比べると、他の各社ブースの展示は、自動車を並べる+ステージイベントというモーターショーの式次第と言いますかテンプレートを超えるものとまでは正直感じませんでした。いや私もある意味中の人ですから良くわかるのです。長年にわたって様々な条件や事情の積み重ねで築き上げられてきたフォーマットです。大幅に変えるためにはほとんど非現実的と思えるほどのエネルギーが必要でしょうし、私が担当していれば「無理です」と言います。トヨタグループも豊田社長のトップダウンがあればこその新機軸であるに違いありません。

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